法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『おいら宇宙の炭鉱夫』

 ラグランジュポイントに置かれた小惑星トーチタスで、少年が奔走し奮闘する。両親のいない彼は、どうしても操縦士の免許がほしいのだ。しかし同時並行で異変が進行していた……


 1994年に2巻まで発売されたOVA。飯田馬之介が監督をつとめ、川元利浩がキャラクターデザインと作画監督を担当する、後の『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の後半に通じる体制で制作された。

おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 [Blu-ray]

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  • 山口勝平,日高のり子,大塚明夫,一城みゆ希
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 当時にKSSの送り出したOVAでよくある、全6巻の物語の途中なのに序盤で打ち切りになった不遇の作品。内容は素晴らしいので、続巻制作の要求が『アニメージュ』でコラムを執筆していた漫画家などからあがったが、かなわなかった。
 2023年2月に2巻まとめてBlu-ray化され、続刊の内容にもふれたライナーノートも復刻された。ただ視聴したのは2006年に1巻ずつ発売されたDVD版。


 視聴したのは十年ぶりくらいだろうか、記憶がはっきりしない。
 しかしあらためてスタッフを見ると、記憶以上に参加アニメーターのレベルの高さに驚かされる。静止画中心とはいえ、OPに参加しているのが本田雄と小池健という組みあわせは類を見ない。
 キャラクターデザインのシンプルでさっぱりした絵柄の完成度も高い。この作品以前の川元は新しさがありつつも線を重ねた濃厚な絵柄だった。つづけて担当した『GOLDEN BOY ゴールデンボーイ さすらいのお勉強野郎』で『08小隊』に通じる絵柄が完成したが、そちらも全6話をリマスター収録した再DVD化がおこなわれ、先月末に発売された。

 ただ本編は元気よく動くというより、宮崎駿アニメのような走りなど心地よいアニメらしい動きをさせつつも、物語を壊すほどには動かしすぎない。すみずみまで作画修正をいきとどかせて絵柄をととのえ、ていねいに無重量状態の動作を手描き作画している。演出と作画監督のコントロールがいきわたっている。


 またメインスタッフの構成は前任監督の死去によりひきついだ『08小隊』に近いが、物語の構造も抽出して見ると似ている。人が大勢死ぬような大規模な状況において、主人公がきわめて個人的な意地でリスクをとるような行動をして、主人公を心配する人々を奔走させて負担をかけるが、しかしその主人公の特異な行動が巨大な策謀の一端をつかむことでひどすぎる状況にわずかな好転をもたらす……これがもともと飯田監督の作風だった、のかもしれない。
 発売当時にも問題になったように物語は中断され、地球へ落下する小惑星で見捨てられた人々がひとつの真実を知るところで終わっている。ただ完成した範囲でも、大事故のさなかで個人的な試験の合格をめざして奔走しつづけた少年が努力して生存に成功しつつ事故の結果として挫折するという物語で、一応は主人公のドラマとしてオチはついているか。