法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』百年後のフロク/トゲトローズはご機嫌ななめ

初期原作からのアニメ化と、アニメオリジナルエピソードの二本立て。


「百年後のフロク」は、ゴロゴロコミックを読み終えたのび太が、未来のゴロゴロコミックを読みたがる。まずは雑誌を読み終わり、付録を楽しもうとするが……
ほぼ内容は原作通りで、微妙に細部が現代的にディテールアップされている。原作では小学館の学習雑誌をモデルとしていたが、『小学一年生』をのぞいて休刊したためか、『コロコロコミック』からタイトルを引いている。少女向け付録の着せ替え人形を楽しむ場面で、等身大の少女人形を着せ替えるという難しい描写も、目撃するスネ夫の表情だけを映すというアレンジでアニメ化。
アニメオリジナル描写としては、飛行関係の紙工作が登場。のび太らしい失敗と成功をした後、原作通りの展開で意外な活用がされる。移動するだけの原作よりサスペンス性を高めつつ、伏線をはっての解決につなげる構成がよくできていて、地味に感心した。


「トゲトローズはご機嫌ななめ」は、しずちゃんに嫌われたのび太が、秘密道具で仲直りをもくろむ。苦労して秘密道具を使える状態にまで持っていったが……
徹底的な身だしなみを要求して*1、ていねいにつくさないと花を咲かさない秘密道具は女性のメタファーか。脚本が与口奈津江でコンテが鳥羽明子と*2、物語の基本設計を女性が担当しているスタッフワークも興味深い。しかし、つくす描写がつづくだけで意外性もなく単調だし、女性メタファーとしては秘密道具の態度がステロタイプすぎる感もあった。
CMをはさんで、ついに使えるようになった秘密道具をのび太が利用する。咲くまでに手間がかかるという前半の設定に加えて、3回だけ使えるという後半の設定が複雑すぎて秘密道具らしさを弱めている。ただ後半だけで見ると、その制限を活用したドラマがきちんと展開されていて、後味は悪くない。しずちゃんとの仲直り描写は抑制されていて説教くさくなく、スネ夫の行動も物語にそった自然なものだ。

*1:たしか手を洗わないと機嫌を悪くする秘密道具は原作でもあったはず。

*2:しずちゃんが泣きそうになる場面で、涙を浮かべたりするのではなく目の周囲を赤くする表現が珍しくて良い。