前後とも原作あり。着ぐるみのドラえもんとのび太が南極へ行く企画で、ふたりがアルゼンチンの港にいる実写映像もあった。
「ピーヒョロ ロープ」は、笛の音楽でロープを自在に操る秘密道具が登場。しずちゃんの困りごとを解決してやったかと思えば、のび太はすぐに調子にのりだして……
秘密道具を便利に使うだけの幼年向け初期原作を、大きくアレンジ。笛の音楽を複雑にして、うまく吹けなかったり吹きつづけられなかったりを連発するギャグエピソードに改変された。
しかしアレンジの方向性こそ悪くないが、ロープの使い道と音楽の関連性が終盤の乗馬くらいしかないし、しずちゃんやジャイアンやスネ夫のロープに対する反応が短時間で変わりすぎ。ママを助けた「にづくり」が泥棒を捕まえる伏線となる結末も、回り道が多くて切れ味がにぶったし、今回のジャイアンやスネ夫は迷惑をかけられた側なので信賞必罰の納得感もない。
それでもロープのメタモルフォーゼでアニメらしい魅力があれば良かったが、物語の悪印象を補うほどではなかった。残念。
「兄弟シール」は、貼ると兄弟関係になる秘密道具が登場。のび太がジャイアンを弟と兄の関係にして、いじめをふせごうとする。するとジャイアンは良き兄のようにふるまいはじめたが……
家族とは絆、絆とは枷。その庇護と支配は表裏一体である……先日に『ど根性ガエルの娘』*1の第15話が話題になったこともあり、家族という枠組みについての物語として、以前に原作を読んだ時より味わい深く感じた。兄弟のさまざまな側面を描いていくことは、もちろん思いどおりになりそうで失敗するギャグとしても成立している。
段ボール紙をソリにして川の斜面をすべったり、体力をつけるためジョギングさせられたりの、体育方面を補うアニメオリジナル描写も違和感ない。兄弟ゆえの楽しさがちゃんと描写されているから、ジャイアンの手料理を食べさせられるというアニメオリジナル描写の落差もきわだつ。作画も良好で、ほぼ理想的なアニメ化だった。