法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

スタジオジブリが契約社員として新人動画に月給20万円を出すという件

宮崎駿監督の引退撤回を正式にスタジオとして公表した上で、その映画を完成させるまでの3年間だけ契約するという。
宮崎駿 新作長編アニメーション映画制作のためのスタッフ(新人)募集 - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

2017年10月1日からの3年間
※新作長編アニメーション映画制作のための期間を定めた雇用契約とし、契約期間の延長や、期間の定めの無い雇用への変更は、原則としてありません。

月額20万円以上

すでに批判や懸念の声が多々あるが、社会保険を完備した契約社員であり、あくまで育成する新人に対する月給にすぎず、現代日本のアニメ産業としては破格の待遇といってもいい。
アニメスタッフといってもさまざまで、作画の設計をおこなう役職は、原画と呼ばれる。動画は原画を彩色できるように線を整理したり、動く前後の中間に絵を足してなめらかに見せるという、重要だが末端の技術職だ。平均月収にすると10万円未満という統計もある。
若手アニメ制作者が年収110万円という調査報告は、過重労働や搾取が業界全体にみられることとは、また別個の問題らしい - 法華狼の日記
今回の募集は、建前ということを考慮しても、業界平均の2倍以上の収入が確約されていることは大きい。
そもそも、ただ映画を完成させるだけならば、今から新しく動画スタッフを育てるよりも、フリーランスの人材を集めたり下請けに出せばいい。育成という意図は良くも悪くも嘘ではないと感じられる。


つまり今回の件は、映像史に残るような世界トップクラスの企業が若手を育成しようとしても、正社員として雇用しつづけることすらできず、その収入も社会の期待と比べれば極めて低いという、産業全体の貧しさのあらわれではなかろうか。
ちなみに2015年における民間20代前半の平均年収は253万円で*1、実際は日本社会全体と比べて極端に低いとすらいえない。