法華狼の日記

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朝鮮人追悼碑をモチーフにした作品が群馬県立美術館から排除されるという、表現への二重の弾圧

東京都美術館から政治性をおびているとして作品が撤去された背景について - 法華狼の日記
上記エントリでまとめたように、東京都美術館では2012年や2014年に展示していた作品が「政治的」として排除される憂き目にあった。


そして2017年の今回、群馬県立近代美術館*1から朝鮮人追悼碑モチーフの作品が排除されたという。
http://www.asahi.com/articles/ASK4Q639TK4QUHNB00L.html

撤去されたのは、前橋市の作家白川昌生さんの作品「群馬県朝鮮人強制連行追悼碑」。布を使って追悼碑を表現した直径5メートル、高さ4メートルほどの作品で、同県在住の芸術家の作品を集めた展示の一つに予定されていた。同館と白川さんによると、同館幹部らが21日夕、展示前の最終点検で不適と判断。白川さんと修正を模索したが、最終的に同館側が撤去を求めたという。

記事でも説明されているように、2014年に追悼碑前の集会が問題視され、群馬県から排除されようとして、訴訟に発展している*2
だからこそ作者の白川昌生氏もあえて群馬県で展示しようとしたわけだが、ここで美術館側のいいぶんがふるっている。

同館は「県は碑の存廃をめぐる裁判の当事者。存否の両論を展示内容で提示できない以上、適さないと判断した」としている。

つまり県がひとつの表現を不当に排除した時、排除に対する当然の反発を理由として、関連する表現を排除する口実にできるわけだ。


むしろ公的な権力をもつ当事者だからこそ、いったん美術館の現場が展示を決めた作品に、県が後から口出しするべきではないはずだ。
展示をやめさせることは、「両論」を提示するどころか、積極的に排除すべきというメッセージとなってしまう。