パリでの商売に失敗した男が、危険な借金を大量に背負って命の危機にひんしていた。複数の犯罪歴があるため国籍をもっている米国もたよれず、警察に泣きついてもうまくいかない。絶望した男が橋の欄干をこえて川に飛びこもうとした時、横で女が同じように川へ飛びこもうとしていた……
オリジナル現代ファンタジーとしてつくられた2006年のフランス映画。1999年の『ジャンヌ・ダルク』から6年をはさんで、ひさびさのリュック・ベッソン監督作品。
見ながら、『ソア橋』のような作品なのかと予想した。橋のたもとで死のうとする主人公という導入で連想させるし、途中の観光船をめぐる会話で主人公は泳げないということも語られる。
しかし謎の女は物理的な存在でありつつ、実際に超常能力をもつことが示されていき、最終的に天使としての姿を物理的にあらわす。モノクロシネマスコープでパリの風景を静かにリアルに切りとり、対比的に幻想的な情景が展開されていく。
自殺から救ってくれたとはいえ、ひたすら小男に大女が献身し、娼婦姿の天使として救済していく。あまりにも男に都合の良い幻想すぎて、逆に風刺劇のように見えてしまった。ケチな犯罪をくりかえす小男の内面に良き側面としての女性がいると大女が指摘するくだりなど、ジェンダーバイアスを当時なりに意識した描写のようでもある。
アクションはイマイチ。小男の敵を大女が倒す描写が少しあるが、ほとんど一撃で終わる。どちらかといえば日常ファンタジー映画ならではの要所のVFX使用が楽しかった。その量もけして多いわけではないが。