法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

旭プロダクションというアニメ制作会社が、アニメーターとして雇用したスタッフに農業をさせていたという報道

もともと現状のアニメ業界に偽装請負*1といっていい雇用形態が根づいてしまっている問題はある。
しかし、アニメ制作の延長や広報ですらない業務につかされるというパターンは初めて見た。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201610/20161002_13011.html

宮城県白石市に作画スタジオがあるアニメ制作会社「旭プロダクション」(東京都練馬区)が、東日本大震災の緊急雇用創出事業を利用して雇った従業員を別会社に派遣し、アニメ制作とは無関係の農作業に従事させていたことが1日、分かった。

これはつまり行政による助成を悪用したという側面もあり、それで問題として発覚したということだろうか。

2012年11月〜今年3月、県が発注した「アニメむすび丸」の制作などを計約8610万円で受注。県内在住の男女39人をアニメ制作名目で雇った。
 ところが、同社は少なくとも10人を10日間、宮城県蔵王町農業生産法人「GFC」に派遣し、アニメ制作とは無関係の農作物の収穫に当たらせた。GFCの男性社長は旭プロの役員を兼務しており、GFCは旭プロの事実上の子会社とみられる。

河北新報によると、確認されているよりも農業にあたらせた人数や期間が多い可能性もあるという。


雇用側の主観においては、アニメより働きやすい仕事として農業をさせたつもりなのかもしれない。
Yahoo!に転載された同記事のコメント欄でも、FLASHアニメ制作会社スタジオボイラーを運営している青木隆志氏が、同じような推論で会社を擁護している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161002-00000002-khks-soci

金目当てっていうのは少し違う気がする。たった5人の補助金で農作業させてどれほど儲かるだろうか。義侠心で地元貢献のために雇ったものの、映像やDTPはズブの素人がやれるほど仕事簡単じゃない。できないヤツにしょうがなく趣味の雑事やらせてたら、アニメの仕事したかったヤツにチクられたという流れだろう。

もちろん、このような主張は擁護としては成立しない。それを実名で堂々と表明できてしまうこと自体、問題の根深さと広範さをうかがわせる。


10月3日の旭プロダクション側の発表でも、臨時の短期間と主張して、不正受給を否定しつつも、不適切な対応をしたことは認めている。
平成28年10月2日に河北新報に掲載された記事について | 株式会社 旭プロダクション

 しかしながら、弊社が緊急雇用創出事業によって雇用した契約社員の一部を、弊社子会社である株式会社GFCに、農作業上の緊急の必要性に伴う臨時的な措置として数日間派遣し、GFCの業務を支援させたことは事実です。
 これは、緊急雇用創出事業に関する手続や契約内容に関する解釈を誤り、不適切な対応をとったものといえ、今後このようなことのないよう、従業員管理を徹底する所存です。

以前から県や市には報告しているとも書かれているが、ここまで事実関係が正しいなら、報道されるのはしかたないと感じざるをえない。同じような「解釈の誤り」を他社にさせないためにも。

同記事には、弊社が「ワンピース」や「ジョジョの奇妙な冒険」のアニメ制作の実績があるという記載もありましたが、これも誤りであり、河北新報社には訂正を申し入れております。

これは、下請けしたにすぎない作品を出されては困るということだろう*2フィルモグラフィーから著名な作品を選ぶことを最優先する、アニメ会社の報道でよくある問題だ。
ちなみに実際に元請け制作した『ミリオンドール』は、川口敬一郎監督が降板したり、数分間のアニメなのに総集編をはさんだりと、トラブルつづきだった。それが記憶に新しかったから、こうした問題が発覚しても意外に感じられなかった。


また、アニメ制作会社が異なる業種に手を出すことは、いろいろな前例がある。
スタッフの食生活の改善や、視聴者とのふれあいを目的とした「ufotable cafe」*3。オーガニックなトマトを制作会社のブランドで売る店「ガイナックス マルシェ」*4。建物の1階にコインランドリーをならべた「ランドリーハウス ダブ」*5
これらは形態からして同じような問題は起きないだろうが、ちょっと気にかかるところではある。