法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』大自然は謎だらけ!

今回は、世界の不思議な自然現象や動物の珍行動を紹介したり、ミツアナグマという日本名をもつ小さな猛獣ラーテルの生態を追ったり。


そして最後に「汚れた金(ゴールド)の戦い〜金鉱山の実態」として、金採掘による自然破壊と、それにより苦しめられる現地人の社会が描かれた。

そこには、金採掘によって汚染され、破壊されていったアマゾンの大自然と効率や利益優先で軽視され続けた人権・紛争問題など、予想だにしなかった世界があった。

その場所は南米ペルー、自然豊かなアマゾンの奥地……そう、問題となっているのは、数ヶ月前『NHKスペシャル』の「大アマゾン 最後の秘境」シリーズでとりあげられた採掘者である。
NHKスペシャル|大アマゾン 最後の秘境|第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち|黄金を求め続ける、ガリンペイロ。法律なき世界に生きる男たちの実態

彼らの俗称はガリンペイロ。ポルトガル語で”金を掘る者ども”という意味です。ガリンペイロたちの暮らしは、既成の法律とは無縁の世界。時に仲間を殺めることすら、いとわないのです。

NHKの取材はオリエンタリズムに満ちた秘境へのまなざしに貫かれ、金採掘による自然破壊や、先進国の責任が描かれなかったという。それに対する不満を見かけたし*1、不満に対する冷笑も見かけた。

ガリンペイロに密着したNHKはさておき、今回の番組で見た金採掘の実態や社会の様相も、それはそれで興味深いものではあった。


最初に描かれるのは、カヤポ族の領域に入りこむガリンペイロ。下唇に陶器の円盤を入れる文化で知られる先住民の近くで、ガリンペイロは川岸を放水で破壊して内部の金を取りだそうとする。残るのは泥水の川と、川にそって土がむきだしになった禿山。
もちろん、現地住民は政府へ抗議しようとするし、政府も番組の取材に対しては法律を厳しくしていると答える。しかし調査をしている環境NGO団体は政府は問題を野放しにしているという。
さらにガリンペイロは金をとりだすため、水銀をつかう。常温で液体の金属である水銀は、簡単に金と合金になる。そして水銀とだけ混じりあった合金にしてから、熱して水銀を蒸発させ、純粋な金をとりだす。よく知られているように水銀には毒性があり、蒸気となってただよえば周辺住民の健康を害する。
しかもガリンペイロが合金をつくる方法は、ドラム缶に金がふくまれる土砂と水銀を入れて、素足でかきまわすというとんでもない姿だった。そのような作業をおこなう立場のガリンペイロも身心を壊しかねない。


さらに小集団の集積にすぎないガリンペイロだけでなく、外国企業の経営する鉱山でも問題が起きている。
ペルー最大のヤナコチャ鉱山は米国ニューモント社の所有。そこで2000年にトラックが横転してしまい、飛散した水銀を周辺住民に金銭をしはらって回収させた。その時、健康に影響はないと嘘をついた。結果、1000人以上もの周辺住民に健康被害が発生。怖くなって裏庭に捨てた住民の家では植物が枯れ、家畜が死んだという。
大規模な抗議活動がおこなわれたが、自動小銃武装していた警備にはばまれた。踏切のようなゲートを抜けて入りこんだ人々に対して発砲。そうした衝突で5人もの死者が出たという*2
今回は短い時間ながらドキュメンタリーとして濃密で、「So what?」の一言ではかたづけられない出来事がガリンペイロとその周辺で起きていることを感じさせた。

*1:id:flurry氏のツイートを選んだのは、ブラウザの履歴から探せたためであり、他意はない。

*2:こちらの英文記事がくわしい。Peru Declares State of Emergency as 5 Die in Protest Against Gold Mine Owned by U.S. Firm, Newmont | Democracy Now!