法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

バズプラスが流している『おそ松さん』第9話の「真の意味」が制作スケジュール的にありえない

デタラメな話を流してでもアクセス数さえ上がれば良しとするようなサイトだが、それにしても粗雑すぎて看過できなかった。
【衝撃事実】アニメおそ松さん第9話「恋する十四松」の本当の本当の本当の意味を解説 | バズプラスニュース Buzz+

「第9話を考察している人はたくさんいますが、誰一人として本当の意味を理解している人がいなくて悲しい」と語るのは、アニメオタクになって40年の河野正樹さん(53歳)。いったいどういうことだろうか?

どういうことかという以前に、どんな人選だとツッコミたくなる。本職のアニメライターどころか、参加したスタッフですら解釈をたやすく決められるものではない。どこの誰とも知れない実在するかもわからない人物が無根拠に解釈しただけのことを、どうして信じられるというのか。
これがすでに話題になっている都市伝説だというなら、このようなバズサイトがとりあげても不思議はない。しかしインターネットを検索したかぎりではそういう話ですらないようだ。


その「意味」とやらをたしかめてみると、作品のネタバレになるので詳細ははぶくが、第9話は映像ソフトに未収録となったエピソードの「メタファー」がこめられているという。

「お蔵入りになった第1話やデカパンマンは、二度と公式にブルーレイに収録されたり、配信されることはないでしょう。しかしスタッフは、第1話もデカパンマンも、作品として素晴らしいものであることを自負し、いつまでも心に残すことでしょう」

「視聴者の皆さんが考察して導きだしたのは、あくまで表のテーマ。真の意味を持つ裏テーマが、今回解説したものになります。ダブルの意味を込めてあの作品を作ったスタッフに敬意を表したいです」

第9話から受けとった喪失感を、未収録エピソードの喪失感となぞらえるだけならば好きにすればいい。しかし作品制作のスケジュールから考えて、スタッフが意図した可能性はありえない。
アニメでは脚本が発注されて、会議で詰められて決定項となり、映像の設計図たるコンテが描かれて、作画に入っていく。そういう集団作業だ。末端の小ネタならともかく、6話前の出来事を物語の本筋にとりこめるわけがない。
この作品の制作スケジュールが遅れているわけではないこともわかっている。アニメ監督の神谷純氏が、『おそ松さん』に参加した時期を8月のこととツイッターで明かしていた。

担当したのは第9話の別エピソードと第8話の一部エピソードのコンテ。
最初のツイートは、第1話が未収録になることが公表された11月5日どころか*1、第1話の放映より1ヶ月も早い。第9話の時間配分は前半が短く後半が長いことから、ひとつのエピソードだけをさしかえることも難しい。やはり作品が放映される前に第9話のストーリーは完成していたと考えるべきだろう。


バズプラスは下記のようにしめくくる。

なるほど、確かに、そういう考察をしている人はいなかった。いわれてみれば、急にシリアスな恋愛ストーリーになったのも驚かされた。

しかし『おそ松さん』はすでに第5話の後半でシリアスなストーリーを展開している。前半でカラ松ひとりがひどいめにあい、後半でもシリアスからカラ松が除外されるという構図も同じだ。
第9話が特異と考えるより、第5話との共通項をさぐることが、深読みするにしても説得力が出るというものだろう。