法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

怪盗アニメの2015年

少し前、下の匿名記事が話題になっていた。
http://anond.hatelabo.jp/20151128042922

アニメってたいてい公安側、つまり警察とかそうでなくても治安維持組織に主人公が所属してるか協力してるパターンばっかりよね

それか、もし犯罪者側やテロリスト側だった場合でもあからさまに腐敗した統治組織に(究極的には)道徳心で立ち向かっていくパターン

ちょっとでいいから主人公が自らの私利の為に犯罪を働いている作品が見たいなあ

はてなブックマーク等でいくつもの作品が指摘されている。
ただし、この筆者は義賊は排除しているので、『ルパン三世』は違うという。『ブラックラグーン』も犯罪組織だが、それなりに勧善懲悪的だから違うという。『デスノート』も思想犯的だから違うようだ。
ならば独裁政権の転覆や復讐のためであればテロリストも除外されるだろう。暗殺による革命をえがいた『アカメが斬る!』や、社会に復讐する『残響のテロル』は除外されるはずだ。復讐心のみで動いているとはいえ『ガン×ソード』も違うだろう。


しかし『ルパン三世』は、明らかに原作では義賊ではないし*1、アニメでも全てが義賊や冒険家のようなふるまいに終わるものではない。2015年に放映されているアニメ版も、さほど義賊的ではないはずだ。
今年は他にも怪盗アニメが放映された。まず主人公を倫理的に迷わせていない作品として『怪盗ジョーカー』がある。どこまでも子供向けアニメだが、それゆえクイズやパズルのように倫理を無視したゲームのプレイヤーとして主人公をえがけている。はてなブックマークでも2度ほど指摘されている。
さらに全国区で『まじっく快斗1412』も放映された。主人公は父の死の真実をさぐるために怪盗を演じはじめたが、明らかに序盤から愉快犯として動くようになる。盗んだものが目的の宝石でなければ返却するとはいえ、古臭い男女観もあって、最も古典的な怪盗らしいアニメだった。はてなブックマークで指摘されていないのが不思議。
他にノイタミナの『乱歩奇譚 Game of Laplace』も怪盗をふくむ犯罪者たちを描いている。一応は主人公側が探偵なのだが、江戸川乱歩作品をモチーフにしたこともあって『ブラックラグーン』よりも倫理観をふみはずしていた*2
ただ主人公側が犯罪者というのではなく、怪盗というキャラクターを現代で描くアニメが2014年から2015年に集中したのが、偶然にしても興味深い。


なお、主人公に外道な行動をさせてカタルシスを描くのは、ギャグ作品が多いだろう。はてなブックマークでも『大魔法峠』などが指摘されている。
そこで2015年に主人公の外道ぶりがつきぬけて爽快感を生んでいたアニメといえば『おそ松さん』だろうし、昨年まで範囲をひろげるならば『暴れん坊力士!!松太郎』の一択ではなかろうか。筆者が望む方向性とはちがうような気もするが。

*1:そう読者に向けて語りかける短編まで存在する。

*2:監督とシリーズ構成の作風のためか、どこまで意識的に倫理を外れているのか危うい作品だったが。