法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アンブロークン』の漂流者銃撃の実在をうかがわせる資料が発見されたとのこと

アンジェリーナ・ジョリー監督の映画2作目『アンブロークン』は、第二次世界大戦で米軍パイロットとなったオリンピック選手の、機体墜落から日本軍の捕虜となるまでを描いたノンフィクションの映画化だった。
アンジェリーナ・ジョリー監督第2作で不屈の米軍パイロットの実話映画化 : 映画ニュース - 映画.com

ザンペリーニは42年、搭乗していたB-24機がオアフ島沖で墜落。11人中生き残った3人でいかだに乗って太平洋上を47日間漂流し、たどり着いたマーシャル諸島で日本軍の捕虜となった。そして45年の終戦まで、捕虜収容所で数々の虐待を受けたという。

戦後に恩讐をこえて長野オリンピック聖火ランナーともなり、1年前に亡くなった。
http://www.47news.jp/CN/201407/CN2014070301002133.html


それなりの話題作なのだが、日本軍の残虐な描写を懐疑する主張が産経新聞などから出され、日本での公開が危ぶまれている。
反日映画と呼ばれている『アンブロークン』の日本公開を期待する:コラム - シネマトゥデイ
もちろん批判ばかりではなく、捕虜収容所があった地域では歓迎する意見すら報じられている。
直江津捕虜収容所での捕虜虐待描く映画『アンブロークン』は日本公開未定|上越タウンジャーナル

上越市で元捕虜との交流などの活動を進めている「上越日豪協会」の近藤芳一会長は、原作も映画も英語版で既に見ている。「原作は直江津捕虜収容所のほか、現在の平和記念公園も出てきて、真実に基づいた非常に素晴らしい内容だ。映画の直江津捕虜収容所はシドニーで撮影され、大きな工場や建物が描かれるなど実態と異なる。映画は原作より落ちるが、直江津の捕虜収容所が知られることはむしろ喜ばしい」と話している。


実際に日本での上映をめざした運動もあり、すでに日本語字幕まで完成したりと静かに前進しているようだ。
キャンペーン · 映画「Unbroken」を日本で劇場公開しよう! · Change.org
その運動をおこなっている田中昭成氏が、漂流中に日本軍機から銃撃された描写について、日本側の資料を発見した。
アンチ『Unbroken』論の虚構に反論する

『Unbroken』は1943年(昭和18年)6月23日に漂流中のザンペリーニ氏らが日本軍の爆撃機による銃撃を受けたと書いています。これについて、批判者たちは事実無根、捏造だと主張しました。丸谷元人は『日本軍は本当に「残虐」だったのか』(ハート出版)の中で、下日本海爆撃機搭乗員の言葉を引用し、日本軍機が漂流中の人間を銃撃するはずがないと主張しました。

上記のような疑問に対して、いくつかの誤解や誤認を考慮して、ほぼ同一といえる資料を発見したのだという。

当人たちの記憶違い、日付けの数え方の違いなどから一日ずれている可能性はあると考えました。そこで、23日の戦闘行動調書を見ると、次のような記載がありました。

「黄緑色をなす潜没●の航跡を認め爆撃 効果確認せんがため高度を下ぐ その時救命筏を組みあわしたる敵不時着搭乗員らしきもの発見 敵搭乗員3名と確認するやただちに銃撃 三名とも射殺す」(●は判読不明)

田中氏の指摘によると、3人は実際には死んだふりをしてやりすごしたし、日本軍機の機種を誤認していた。しかし似ているだけの違う事件だったとしても、日本軍が漂流者を攻撃しないという主張の反証になることは間違いない。

この「戦闘行動調書」を見たいなら、アジア歴史資料センターのサイト(http://www.jacar.go.jp)へアクセスし、レファレンスコード「C08051706100」で検索して「昭和18年6月 755空 飛行機隊戦闘行動調書」を表示してください。該当ページは31、32ページです。

確認してみたが、たしかに田中氏のページに掲載されたとおり資料が出てきた。ここで国立公文書館の存在意義を感じる。