法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ラッキーやかん/なんでもぬいぐるみに…/大人になりたい

中間のみ原作あり。全体として作画が良かったが、ちょっと見ないスタッフが入っている。下請けとの関係が変わったりしたのかもしれない。


「ラッキーやかん」は、持っているだけで幸運になる秘密道具に見せかけて、ただの薄汚い薬缶でこらしめようとするエピソード。
原作者好みの落語を思わせる物語。原作でいうと「ウルトラ・スペシャルマイティ・ストロングスーパーヨロイ」が近いか。それらしいラッキーが間断なく描かれて、のび太どころかドラえもんまで信じこんでしまう展開に説得力ある。薬缶そのものに意味がないからこそ、ちゃんと水を飲ませる道具として役立ったり、その形状がオチに結びつくことに面白味がある。
のび太は幸運が錯覚ということに最後まで気づかず、しかし秘密道具が失われることで物語は閉じられる。あくまで変化球だが、よく構成されていた。


「なんでもぬいぐるみに…」は、ぬいぐるみを制作する秘密道具で、しずちゃんにプレゼントをするエピソード。
原作でたまにある、図画工作そのものの楽しさを描く物語。ぬいぐるみ制作に手間がかかるところが、肌ざわりあるリアリティと、創作の楽しさを味あわせてくれる。アニメオリジナル描写としては、スネ夫も途中から参加するのがポイント。スネ夫のフォロー描写であり、ぬいぐるみのバラエティも生みだした。
コンテ演出の「とよしまアタル」は初めて見た名前で、検索にも引っかからないが、偽名だろうか。作画監督の西村昭子や原画はスタジオ・ルナが多いが*1、それもふくめて『たまごっち!』シリーズの参加スタッフが多い。その関係者のような気もするが、それらしい名前が見つからない。


「大人になりたい」は、スネ夫のように喫茶店で大人の世界を体験しようと、秘密道具で変装するエピソード。
秘密道具の「変装服」は単行本未収録の掌編に登場する。じっと見つづけた相手の姿になる機能をつかって、まったく異なる物語をつくりだした。プロポーズがいきちがう展開も「プロポーズ作戦」に似ている。しかし変装が成功ではなく失敗につながる展開で、差別化に成功した。
最初はコーヒーを飲もうとしただけなのに、別の意味で大人の世界をのぞきみる展開の巧さ。最後に待ちかねたコーヒーを飲んだが、苦味に驚いてしまう結末の深さ。ちょっと背伸びした児童小説のような味わいがあった。