法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「大虐殺」は「問題になりえない」?

脱原発エントリで有名らしいブログが*1、最近になって従軍慰安婦問題で朝日新聞を批判していた。たとえば下記エントリを代表とした、植村隆批判エントリがいくつかある。
植村氏の蒔いた種が成長して、醜悪な大木となるまで: 農と島のありんくりん
全体としては、他国も同様という論理で、問題性の指摘を妨げようとしている。そのために事実誤認をおかしているし、倫理面でも問題ある記述が多い。

南京「大虐殺」、靖国参拝、教科書問題、ことごとく朝日は外国政府に注進し、本来問題になりえないものを国際問題化することで、自国の政局を自らの思うがままに操作するというのが伝統的手法だったのです。

特に「問題になりえない」という記述には驚き、つい長文でコメントしてしまった。

>たとえば、植村氏が金学順さんがいかなる経緯で慰安婦に売られたのかを裏取り取材したらとうだったのか、


裏取りしてもしなくても、現在の歴史研究から見て植村記事に事実関係の大きな誤りはないので、何の違いもなかったでしょうね。


>当時の韓国社会における女子挺身隊と慰安婦の混同を解説する一文を添えて書き上げればどうだったのか・・・、とか。


当時の日本社会でも挺身隊と慰安婦との差異ははっきりしていませんでした。逆に、名称の違いがどれだけ認識に違いを生んだかというと疑問ですね。
だいたい読売新聞等も挺身隊と慰安婦を「混同」していましたからね。


>当時の朝日新聞は、「従軍慰安婦」問題を、あえて宮沢訪韓の前段にぶつけることで、韓国側の反発を作り出し、それを外交懸案にすることで自民党政権に痛打を与えることを狙っていました。


普通に根拠のないデマですね。
そもそも自民党政権に痛打が与えられたとして、報道内容に誤りがなければ何ら問題はありません。貴方は与党に痛打を与えてしまう時、批判をしないのですか?違うでしょう?


>南京「大虐殺」、靖国参拝、教科書問題、ことごとく朝日は外国政府に注進し、本来問題になりえないものを国際問題化することで、自国の政局を自らの思うがままに操作するというのが伝統的手法だったのです。


大虐殺が問題になりえないという文章を読んで目を疑いました。これは人間として駄目でしょう。


>なんと初めに日本政府に「謝罪」を持ちかけたのは、当の韓国政府だったのです。


悪事の責任を明らかにされても、被害者側から持ちかけられなければ謝罪しなくていいというのですか?

以降、ブログ管理人や第三者とコメントをかわしていった。そのひとつを転載する。

管理人さんへ
>今どきホンダ勝一の『中国の旅』を全面肯定するなんて、週刊金曜日くらいだよ。


全面肯定はしていません。
(2014年12月23日 (火) 19時49分)で反論したのは、「主観のみで問題化させた」という主張に対してです。本多著作が主観以外の情報源も押さえていれば、たとえ現在の観点から誤っていたとしても「主観のみ」とはいえません。


>強制連行されたというのが、当時の朝日などの主張ですが、「キーセンに40円で親に売られた」という部分は不都合だから「落した」のです。


少なくとも読売や毎日も落としていたのですが、朝日新聞の影響力はそれらの新聞にもおよんでいた、と?
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20130724/p2
池田氏やその支持者は勘違いしたのでしょうか? 彼らがこう考えているからです。「悪いのは女を売春婦にしたやつで、すでに売春婦になった女をどう扱おうが客の勝手だ」、と。そう考えるからこそ、親によって「キーセンに売られた」という事情は日本軍を免罪する決定的な事実だ、などと勘違いできるのです。



>南京市の当時の人口は20万人、殺したくても、そんな人口がいません。


その根拠となる資料はありません。


>30万人の死体ってどの程度の量になって、何時間かけて焼却して、どこに埋めたの?


たとえば崇善堂の埋葬隊が4月までかけて、城内と農村地区で11万2267体を埋葬した記録があります。
http://space.geocities.jp/ml1alt2/data/data8/data8-4.htm


>弾薬不足気味の前線部隊が30万人も殺す弾薬を持っていて、焼却した死体を巨大な穴に埋めたって、ムチャクチャ言っているのですよ、きみは。


他国へ侵攻している軍隊が民間人をふくめて30万人を殺す能力がない、という主張は逆に驚きです。何発の弾薬があったと思っているのですか?
全ての死体を焼却して巨大な穴に埋めたと私は主張していません。そもそも30万人説を採用はしていません。


>中国の主張が正しいのなら、日本軍は世田谷区ほどの狭い面積の中の市民、兵隊を全員殺して、無人状態になっていなければならなかった


南京自体はもっと広いです。
http://www.geocities.jp/yu77799/jinkou.html


>投降者の殺害までを虐殺というかは意見が分かれます。微妙なグレイゾーンです。


投降の意思を無視して攻撃するまではグレーゾーンだとしても、いったん捕虜にして無裁判処刑すれば虐殺ですよ。


>笠原さんだけ読んでいないで、もっとニュートラルな秦さんの『南京事件』くらい読んでから議論したらどうなの。


私は秦説を無視していませんが?


>最後に、「人間としてダメ」、こういう侮辱的な人格否定は止めなさい。見苦しい。


えっ……貴方がいうのですか?

ちなみに植村記者が「不都合」を意図的に落としたというブログ管理人の根拠は、下記エントリのとおり。
「第1報を書いただけ」「挺身隊は慰安婦と呼ばれていたから」と言う植村記者: 農と島のありんくりん*2

自分がキーセン学校に売られたという事実は、もっとも伏せておきたいことのはずです。

なぜなら、それが一般に分かってしまえば、「なんだ元々キーセンだったんじゃないか」ということになって、日本政府の強制的関与の主張にとって著しく不利になるからです。

わざわざ、自分の主張にとって不利な部分を、あえて後に挿入するでしょうか? ありえません。

元々の弁護人聞き取り内容に存在して、否定しても仕方がないと金さんらが考えたから訴状に書いたのでしょう。

あらためて読み返すと、ただ人間的にダメというより、むしろ日本人らしい感覚の素直な表明だと感じてしまった。


そうしてやりとりの果てに私は最後のコメントを削除され、新しいエントリでブログ管理人から批判された。
慰安婦各国事情 日本は慰安所をドイツに見習った?昨日の乱入の感想つき: 農と島のありんくりん

意見が違うサイトには、「ああ、こんなこと言っていやがら」ていどで素通りしますよね。いちいちそこに突入して、大暴れしてみようとは思わないはずです。

それが多様な価値観を前提に営まれている一般の社会常識です。

私は誠実であろうとして根拠を提示していったが、それが可読性を損ねうるという考えは否定しない。また、ブログのコメント欄は管理者の裁量で管理されるものであり、私のコメントを禁止するのも自由ではある。
それはそれとして、この私への批判エントリは正しい主張をしているというわけでもない。やりとりの下記要約からして間違っている。

私も遅ればせで介入して、「違いますよ、中国の言うような30万人は物理的にも無理な誇張なんですよ」と、できるだけ狭いスペースで丁寧に答えたつもりでいると、今度は私に対して逆ギレしてきました。

そもそも私がコメントで紹介した南京自体の広さを説明するページに、管理人が依拠しているという秦郁彦氏の見解も引用されている。
南京事件の犠牲者数*3

秦 南京守備軍がどのくらいいたのか、南京の一般市民の人口がどのくらいだったのか、両方ともわかりません。戦闘で何人死んだのか、何人処刑されたのか、初めからおしまいまでゲスワークなんです。

 当時、南京市内に住民は二十万しかいなかったから、三十万殺せるわけがないというと、みんななるほどと思いますが、二十万しかいなかったという根拠もないんです。

(『諸君!』2000年2月号 P87)

これを指摘した最後のコメントが削除されたのだが、よく読んでいれば私への批判も違った内容になっただろうか。それとも、それまでのコメントもよく読んでいないので無理だったろうか。
エントリをあらためた私への批判ということもあり、念のためコメントしたが、掲載されないことを確認した。しかたないので下記に記録しておく。

言及されたのでコメントしましょう。
「正しく怖がれ」というように正しさを目指すならば、事実関係の正確さに注意してください。


まず、前々回エントリの「警告を無視した連投が続いていましたので、削除しました」と今回エントリの「私が打ち切りを管理人として宣告」については、すみません。「これにて終了」が議論の打ち切り宣言だとは思いませんでしたし、連投禁止の意図とは思えませんでした。
なぜなら、「コメントで私が書いた南京事件に対する認識は、秦さんの説そのままですが、ほんとに読んだの?」という質問文や、「一歩一歩いこうね、ほっけクン。」というコメントを管理人さん自身がおこなっていたからです。まさか回答を拒否するとは思いませんでした。


>ただひとこと南京「大虐殺」とカッコをつけたのが気に食わなかった、ただそれだけです。呆れてものが言えません。
>「大虐殺がないなんて言うのは人間としてダメ」だそうです。おいおい、いきなり自分と意見が違うだけで、人格否定かいと驚きました。


そのようなことは一言もいっていません。私が批判したのは表現ではありません。その証拠にコメント欄で「南京事件」という表現を初めて使ったのは、(2014年12月23日 (火) 18時18分)や(2014年12月23日 (火) 19時49分)の私です。
私が批判してきたのは、管理人さん自身が「誤認による市民殺害はありえる」とコメント欄でも認めながら、「本来問題になりえない」と評価したことです。


>たまたま第三者委員会の引用元が産経だったので、ほら見たことか、といわんばかりで「産経からなんかから引用しているようだから」と決めつけてきます。


いいえ、管理人さんがソースにもとづいて分析しているというコメントがあったので、一次ソースにアクセスしていないことを指摘したという順序です。実際に報告書のニュアンスがとりこぼされたことも具体的にコメントしましたが、削除されたのでしかたありません。


放射脳の皆さん方も、すぐに「東電の手先」「原子力村からカネをもらっている」、となにかとレッテル貼りをしましたね。


レッテル貼りを批判するなら、「放射脳」という表現はやめたらいかがでしょうか。
一方、私はコメント欄で右翼や左翼といった表現は使っていません。個々人の具体的な主張に向きあいたいからです。


>私、ホンダ勝一なみたいな中国政府から勲章もらえそうな奴なんてどうでもいいんですが・・・、なぜそんな奴を巡って議論せにゃあかんねん、と情けない気分になりました。


本多勝一氏をめぐる「議論」を管理人さんとした記憶がありません。全面肯定はしていないと返答しましたし。
私が指摘したのは、30万人は物理的にも無理な誇張とはいえないことを、管理人さんが依拠しているという秦郁彦氏も主張しているという事実です。念のため、物理的に可能であることと、それが妥当な説であるかは別問題です。

そもそも、きちんとした被害規模の調査資料を日本が残していないことは、むしろ加害側の問題といえる。

*1:はてなブックマークを最も集めたエントリがそれ。http://b.hatena.ne.jp/entry/arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-9.html核燃料の最終処分を脱原発派の課題として設定していたりと、どちらかといえば脱原発派に責任を負わせようとする論調が広く受けたように感じる。

*2:強調引用ママ。

*3:引用時、文字色や太字の変更を排した。