チョッキを着るか、パンツを履くか、そんなバカバカしい対立ではじまった惑星戦争で文明が終焉するまでが滑稽に描かれる。そこにまきこまれる主人公たち。
すべての葛藤が戦争によって消滅した果てに、絵と音の快楽だけをつきつめた宇宙遊泳がおこなわれる……
ストーリー原案からコンテ演出、作画監督そして原画や美術まで、ほとんど1人でこなした三原三千夫の才人ぶり。そしてクライマックスを田中宏紀にあずけた判断と、それに応えきった仕事の素晴らしさ。
これこそ映像作品のひとつの理想形だ。『ガリバー旅行記』の昔からあるくらい古典的な社会風刺は、あくまでクライマックスまでのしたごしらえ。すべてがひとつのシーンに奉仕する、そのためにはドラマすら余剰だといわんばかりの思いきり。
雰囲気はまったく違うが、同じBONES制作の映画『ストレンヂア 無皇刃譚』の構成を思い出した。