法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キミとアイドルプリキュア♪』第49話 キミと一緒に!キラッキランラン♪

 ダークイーネのところに単身でたどりついたアイドルプリキュア。しかし、そこまでに他の敵を引きうけた仲間たちは水晶に閉じこめられてしまっていた。そしてアイドルプリキュアも咲良うたの姿で、水晶にとらわれる。
 薄暗く誰もいない町をさまよう咲良。それはダークイーネの水晶のなかで見せられている幻。それでも咲良には歌があった。プリキュアにならなくても、ただ歌いつづけることで咲良は鼓舞する力を手に入れる……


 今千秋シリーズディレクターの演出に、加藤陽一シリーズ構成の脚本で、最終回らしい描写をつめこんだ最終回。逆境からの最終決戦から後日談の日常、別離、そして未来の姿まで一気に見せる。
 通常よりは力の入った映像でカタルシスをたたみかけられたので、娯楽としてそれなりに楽しくはあった。過去作の最終決戦ほどに目を引く作画アニメというわけではなく、むしろ作画だけなら前回のキュアウインク戦が良かったくらいだが、ガールズアクションアニメとして充分な水準にある。


 また、ダークイーネの正体の抽象ぶりと、それとの対峙にアイドルライブを選ぶキュアアイドルの判断に前回*1で疑問をおぼえたが、歌で抽象的な敵を浄化するという展開にはギリギリなっていなかったところは良かった。
 あらすじで書いたように、まず歌はそれを愛好する自分と仲間にとどくものであり、敵を攻撃するための武器ではない。だから最終決戦で決定的に追いつめられた場面でありながら、変身しない生身のままで歌うことができたし、それに意味が生まれた。
 ダークイーネに対して歌をとどけようという試みはおこなって、実際にそれで対立を回避できたが、ダークイーネが歌そのものに感動して心変わりをしたわけではない。あくまで歌は攻撃ではないコミュニケーションの手段であり、むしろそこでダークイーネが歌をこばみ光を否定するという反発を引き出したことが、光とともに闇があることを否定しないというプリキュアの応答につながり、説得されるかたちで戦いが終わったのだ。
 これは、あたかも闇の子のように示唆されてきたメロロンが完全に仲間になったドラマの延長でもあるし、ささいな出来事で少し沈んだ気持ちから怪物が生み出される今作の世界観にも合っている。


 そして咲良と響カイトの描写もスピーディーにすませて恋愛未満にとどめ、通常EDに移行したかと思いきや本編のストーリーも継続する。
 適度に肩の力を抜いて、娯楽作品でやるべきことを1話ですませた最終回としてはよくできていたとは思う。
 正直にいえば、このシリーズに期待しているものは見られなかったという感想も残ったが。


 最終回なので、全体の感想も書いておく。
 良くも悪くもメロロンの登場と変身から方向性が急旋回したシリーズという印象が強い。
 装飾が多くて頭身の低いキャラクターデザインで例年以上に低年齢向けの作品と予想し、初回*2の力士とプリルンの傍若無人ぶりでシュールギャグを期待したが、意外とシリーズのイメージから外れる展開はなかった。すごかったのは土田豊が演出を担当した第34話*3くらいで、力士の個別回となる第33話*4は人情劇の要素が強かった。先述の怪物化の動機の弱さは各話のドラマの弱さにもつながっていた。ところかまわず歌う主人公の咲良と、アイドル愛好家の紫雨の行動でストーリーを引っぱり、蒼風の天然で笑いどころをつくるという、少数のメインキャラクターで話をまわすパターンばかりで変化にとぼしかった。
 そこにメロロンが登場し、妖精姿でプリルンへの執着を見せるようになってから、良くも悪くも人間模様に刺激が出てきた。そして傍若無人だったプリルンは幼い人格のままアイドルプリキュアを愛して人々を助けようとするキャラクターと再定義され、プリルンとメロロンが変身した人間姿は咲良たちとは一転してシリーズ平均よりも頭身が高めで大人な雰囲気になった。並行するように、あくまで咲良を子供あつかいしていたレジェンドアイドルの青年、響カイトとも恋愛をにおわせるような描写が増えていった。
 しかし低年齢の視聴者が入りやすくしつつ大人のドラマを見せるというには、シリーズ過去作で踏みこんだドラマを描いたエピソードに優るものはなかったと思う。思いつくのは、2025年の話数単位ベストテン*5で個人的にギリギリ落とした第14話くらいか。中盤のプリルンたちとの別離からライバル的なプリキュアになっての再会までは楽しいドラマにはなっていたが、合流したところでプリルンのドラマとしては完結してしまい、メロロンのドラマは期待より闇が浅いかたちで終わった。


 何より、背伸びしたドラマをつくるには、プリキュアのアンチとして配置される敵組織のキャラクターが弱すぎた。
 いや、ろくでもない仕事をしぶしぶつづけながら敵のアイドルに癒されるようになって救われる敵幹部キャラクターは完成されていた。
 しかし、作品の基盤となる異世界へ侵攻した動機や敵首領の位置づけなどは最終回の前話*6にようやく明かされるくらい遅く、敵は作品のルーチンワークとして主人公を攻撃するだけの存在と感じる期間が長すぎた。
 そもそも最終回で描いたような光と闇の対立構図を描きたいなら、もっと早くダークイーネの設定を説明するべきだし、そもそも設定ももっとドラマに密接になるよう考えぬいてほしかった。たとえば、メロロンは概念から生まれたダークイーネが人格をかためるまでに捨て去った人格のひとつで、チョッキリーヌも同じような存在にするとか……
 メロロンが受けいれられるまでのドラマを見ても、メロロンを投入した当初はもっとダークイーネと関連する闇深い設定を用意していそうだった気がするし、逆にメロロンを投入した遅さから考えるとダークイーネの設定を決定するまで時間がかかっていそうな感じもある。いずれにしても敵組織のキャラクターやストーリーを結末から逆算してつくれていれば、もっと良い作品になれたと思うのだが。

 
 なお、主軸のモチーフとしてはシリーズ初のアイドル要素は、かつて視聴者をとりあったライバル番組の『プリティーリズム』や『アイカツ!』のモチーフで、今期は『プリンセッション・オーケストラ』という新規コンテンツもつくられたので、どう調理するかが注目されていた。
 しかし視聴してみると一応はストーリーの主軸ではあったし、EDで技術を蓄積してきたライブ映像描写をつかった浄化技は素晴らしかったが、あくまで派手な必殺技の範疇にとどまっていた。さまざまなキャラクターのさまざまな歌をバラエティ豊かに見せるアイドルアニメ一般とは、そもそもライブの位置づけが作品の構造レベルで違っていた。
 一方、意外なところで良かったのが、アクションの健闘ぶり。前半は近年の水準的なアクションに終始していたが、東映が同期につくる作品が少ないおかげか、スタッフのスケジューリングがうまかったのか、後半から作画が充実するようになった。
 感想をふりかえると、だいたい第39話*7から毎回目を引くアクション作画がどこかにあり、キュアキュンキュンのビームなどで集団戦の駆け引きを描くようにもなっていった。ここまでガールズアクションアニメとして充実させてくるとは思わなかった。