法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『革命機ヴァルヴレイヴ』第4話 人質はヴァルヴレイヴ

超常的な能力を持つ新兵器ヴァルヴレイヴが、2大勢力の争奪対象というよくある立場を超えて、政治的な第3極を境界線上で成立させるまでを描く。


『革命機ヴァルヴレイヴ』がネタアニメあつかいされているのは富野由悠季作品っぽいから - 法華狼の日記

アニメ雑誌の『革命機ヴァルヴレイヴ』インタビューでも、松尾監督は富野監督を意識していたと答えていたそうだ。

しかし富野監督は長らく新作を作っておらず、まとまった作品としては2006年のOVAリーンの翼』くらいしかない。

さて、OVAリーンの翼』が「バイストン・ウェル」という異世界をノリシロにして日本の過去と現在をつなぐ試みだったとするならば……
革命機ヴァルヴレイヴ』は一見して古典的なだけの東西冷戦を模した構図にとどまらず、戦後日本の紆余曲折まで描こうとしているのかもしれない。


だとすれば、第1話で世界観が古臭く見えたことも当然であったか。
『革命機ヴァルヴレイヴ』第1話 革命の転校生 - 法華狼の日記

主人公の住む国が隣国からの領域侵犯や軍事的な威圧にひざまずいており、そうした平和ボケした社会の目線から導入するところは、いささか世界観が古臭すぎる。

この物語において、いったん助けの手をさしのべて熱狂的に受け入れられたアルス勢力の議員は、約束をたがえたために恥ずかしくないのかと非難され、「全然。大人だからね」と答えた。それに抗する主人公側は学生ばかりで、つまりはほとんどが子供だ。戦後の日本国民から熱狂的に受け入れられたマッカーサー元帥が、日本人を未成熟な12歳とみなしていた逸話を思い出す。
主人公勢力の選択も同様だ。家族が残っていると知りつつ土地を切り離したことも、稚拙な外交戦術を決断したことも、双方勢力から距離を取るといいつつアルスの助けを借り続けることも、それらを演説したのが戦闘前の権威を継承する子供であることも、戦後日本の似姿と考えればわかりやすい。


一見するとサンライズ伝統の企画「宇宙版十五少年漂流記」のようだが、今だからこそ意味がある企画でもあるかもしれない。
ただ、本当にこの構図が正しいとして、ただ紆余曲折をなぞるだけのカリカチュアでは意外性が生まれにくい。それを見越して設定の装飾を派手にしているとは、あまり考えたくない。かといって物語が途中から大きく異なる歴史を歩みはじめると、アナロジーの性質が薄れていく。
第4話の結末が実質的な起点とすれば、第2話の結末に持ってくるくらい展開を圧縮しても良かっただろう*1。これからどのように物語を転がしていくのか、やはり正直にいって不安が残る旅立ちでもあった。
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*1:たとえば、「一人旅団」という設定があるのだから、かろうじて1人だけ潜入させられる枠に高い能力を持つエルエルフを入れたと設定すればいい。工作員として難がある性格も他の能力を優先したと考えられれば許容しやすいし、敵キャラクターの数を省略できる。そして戦闘が始まった場面から第1話を始めて、学園の日常はフラッシュバックで処理し、ハルトがヴァルヴレイヴに乗ったところをエルエルフが殺害してコクピットへ入る。そして操縦席で復活したハルトが第3話のようにエルエルフと衝突しながら戦闘して勝利し、アルスの援軍が来たところで次回に続く。それから人格交換や数人のキャラクターを後の回で登場させることにして、いくつかの脇道を整理すれば、第4話の結末まで2回で持ってこられるように思う。もちろん、この案で収めることが実際に可能かどうか検証はしてないし、できないが。