法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『聖闘士星矢Ω』第 51 話 輝け光牙!光と闇の最終決戦!

第一期の最終回らしく、OPは過去回の映像を編集した特別版。歌詞にあわせた場面選択が印象的。


本編でも、吉田玲子脚本、畑野森生演出、馬越嘉彦作画監督という布陣。原画にはこれまで参加してきた素晴らしいアニメーターが集結。第1話以来の林祐己から、初参加の高谷浩利や長濱博史の名前まであった。
映像も、そうそうたるアニメーターの名前に負けない素晴らしさ。光と影のエフェクト合戦にとどまらず、奥行きを強調した高速空間戦闘、ビビッドな配色による表現主義的な演出、消し炭のようになった右手を斜線で表現する作画技法、さらに鉛筆そのままの描線で格闘戦を描写するクライマックス……存分に作画アニメとして楽しませてくれた。


物語そのものは単純。主人公一人で敵と戦い、育ての母を助けようとする構図で最後まで押し切る。
しかし仲間達の助力にも光をあて、倒した敵にも小さな救いがあったことを描写し、話が薄すぎるとは感じさせない。むしろ、終盤で死者の助けをえた場面などは、抑制がきいていたからこそ良いと感じた。
闇に生きているからこそ輝こうとするのだという結論も悪くない。主人公の成長だけでなく、出自も全否定はしない。


第一部の最終回なので、全体の感想も。
演出面では、後半から参加した追崎史敏コンテがベストか。登板回数は少なかったが、地岡公俊松本理恵といった若手の演出家もいい仕事を見せてくれた。
作画についていえば、馬越嘉彦デザインからの予想より、上下差が大きかった。たまにスペシャルなアニメーターが登板したりと、その上下差が予想できない楽しみを生んだりはしたのだが。そもそも中盤で最近は珍しい再放送らしい再放送をはさんだりと、スケジュールの厳しさが画面から感じることが多かった。
そして物語面では、主人公をはじめとして、擬似をふくめた家族という共同体の良き側面と悪しき側面を入念に描いたところが印象に残る。現代的な子供向け作品として大切なテーマであり、興味深く感じた。
キャラクターのバランスも良く、メインストーリーと密接なために動かせにくい主人公のかわりに、蒼摩とソニアの復讐関係を配置して印象深く因縁を描いたり、主人公と妹をはさんで対になるライバルを配置したり、血縁関係で原作との連続性を強調したり、何でもありの忍者キャラクターで笑いをとったり……ただ逆に敵キャラクターは、中心となる家族関係を除いて、似たようなパターンに収まってしまったのが残念だった。
また、基本的に華美なようでいて不良マンガ的な世界観でつらぬかれた原作に対し、やや語り口が健全すぎたようにも思う。敵キャラクターも、どこかで同情できるような弱さを見せるまではいいが、結果として倒すべき敵の多くが小物に感じられてしまった。もっと神話らしい理不尽さで貫いたほうが、『聖闘士星矢』らしくなっただろう。