法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

グアテマラ内戦における性的奴隷

はてなブックマーク経由で見た、グアテマラ内戦の記事。国軍に性的奴隷とされたという訴えと、それに対する国軍の反論が掲載されている。
http://ips-j.com/entry/3720?moreFlag=true
グアテマラ内戦は、冷戦下において反共産主義のためアメリカが独裁者を支援し、反政府ゲリラと長い衝突をくりかえしたもの。その際、先住民らを国軍が虐殺したことも判明している。

9月の最終週、グアテマラシティで行われた元軍人37人に対する容疑の予備的審問で、1982年から86年の間に性的虐待・奴隷労働を強いられたペレスさんを含む15名の先住民族ケクチマヤ族の女性が証言台に立った。

ペレスさんの証言によると、彼女ら女性たちは、駐屯地の指揮官ミゲル・アンヘル・カールから「駐屯地に行けば洗濯したり料理をしたりする人間が必要だ」と言われて連れてこられたという。その時は、軍駐屯地でその後長期に亘ってどんな恐ろしいことが待ち構えているか、考えてもみなかったという。

ペレスさんは、「当時は朝6時から兵士たちの食事を作り、洗濯をし、給仕したあと、様々な兵士にレイプされました。兵士たちは、『拒否すれば殺すぞ』と言ってレイプしながら銃を胸元に突き付けてきました。」と付け加えた。

洗濯や料理以外に何をさせられるか説明せず、騙して連れてきたという。日本の慰安婦制度等でも見られた事例だ。

「ある日、意を決して中尉に苦境を訴えたところ、『兵士らがそうする原因はあなたにあるのではないか』と言われました。」と証言したペレスさんは、日常的に強いられた性的虐待が原因で流産も経験した。

この発言は、性的犯罪において被害者の落ち度を指摘しようとする誤った態度だ。現代の日本社会でも、残念ながら少なくない。

「性暴力は、戦争の武器として使われてきました。しかしこうした犯罪に対する正義の裁きが行われ始めたのは、ユーゴスラヴィア内戦及びルワンダ内戦を裁いた国際法廷が開かれた1990年代になってからです。」とモランさんは語った。

これも、従軍慰安婦問題が国際的に大きく取り上げられていった時期と重なる。国連のマクドゥーガル報告書は従軍慰安婦問題について言及していることで有名だが、報告書の中核はユーゴスラビアルワンダを取り上げている*1

女性たちが予備審問で証言を行う中、グアテマラ国軍の元予備役軍曹リカルド・メンデス・ルイス氏も法廷で証言に立ち、「たしかに国軍は内戦時にそのような人権侵害を行った。」「しかし同時に、ゲリラも同じことをやっており、正義は全ての人々に平等になされなければならない。」と証言した。

現在は実業家であるルイス氏は、2011年、左翼ゲリラによって自身が誘拐された事件について、当時事件に関与したとされる26人を告発する裁判を起こしている。今日、ルイス氏は、人権侵害の容疑で訴追された元軍人を支援する活動を行っている。

IPSの取材に応じたルイス氏は、証言台に立った女性達について、「検察が指定した証人や原告たちは、みんな教育レベルが低いのは明らかだ。正確な日付だって覚えちゃいない。つまり、彼女たちは、誰かに操られているかもしれないってことだ。」と語った。

ルイス氏は、検察のやり方は「偏見」に満ちており、「国軍に対する復讐を目論んでいるのは明らかだ。」と繰り返し語った。

そして、今回の予備審問の場合、「金儲け」も動機として作用している、と批判した。

「これまでにも米州人権裁判所は、グアテマラ政府に対して数百万ドルにおよぶ莫大な賠償金の支払いを命じているが、その大半は原告のポケットに入るだろう。」とルイス氏は語った。

この国軍元予備役軍曹の反論は、どれも日本の戦争犯罪を否認する言説で見たものばかりだ。
証言者の教育程度や、十年以上前の事件について詳細な日付を記憶していないことから証言へ疑義をはさみ、背後で操っている者の存在をにおわせる。金目当てで訴えているという主張も同様だ。


むろん、グアテマラ固有の問題としてとらえることを忘れてはならないし、日本にだけなぞらえることができる問題でもない。他国の歴史認識でも似たような理屈で戦争犯罪を否認しようとしている。
数年前にパレスチナ問題をとりあげた『ETV特集』を見ていた時、被害の訴えを懐疑するイスラエル人の発言が、ネオナチによるホロコースト否認の理屈にそっくりだったことに唖然とした。今でも強く印象に残っている。