法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『精霊の守り人』第1話 女用心棒バルサ

プロダクションIG制作の硬質なファンタジーアニメ。三十路の女性が幼い王子を守る設定が何とも現代的*1
序盤はネットで見ていたが、最後まで確認するために視聴。かけた手間が適切に画面で現れている作品、といった印象がある。
くっきりとした背景美術が、実写のような雰囲気を感じさせる。同時期に制作された『電脳コイル』が、あえて緻密な背景をぼかしていたことと対照的。
人物も、うるさくない程度にハイライトや影が入っていて、顔の造形や体型が現実に近い。市場では、大勢の人が自由に動きまわるよう手間をかけている。細部での人物の動作は意外と甘いところも多いのだが、劇場アニメのような情報量、実写のような現実味を感じさせる。


衛星放送時のNHK番組*2で、ていねいに細部を詰めていく脚本会議が注目されていたくらい、描写に隙や無駄がない。キャラクターを前面に押し出すこともなく、舞台や物語の目的設定まで、初回だけで過不足なく説明できている。
ただ、結果として手練手管が目につく欠点も感じた。権力や権威に媚びず、それでいて権力者に反発するわけでもない主人公バルサの性格描写が典型的。好感度を上げようとするための台詞、挿話、さらに人間味を持たせるため食を楽しむ場面も入れる……ありきたりなお約束というほどでもないが、教科書的で、過去作品の知識で予想きる範囲を超えていないことが残念*3

*1:原作からの設定。

*2:実質的な宣伝番組ではあったが、一応は普通の番組でアニメ制作を取り上げるという形式だった。

*3:いびつな作品の方が、おうおうにして印象に残るもの。