法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

秦教授の従軍慰安婦問題に関する新発言

3月5日の安倍首相答弁に対する評価を、私信的に引用*1

現実には募集の段階から強制した例も僅かながらありますから、安倍総理の言葉は必ずしも正確な表現とはいえません。「狭義の強制は、きわめて少なかった」とでも言えば良かったのかもしれませんが、なまじ余計な知識があるから、結果的に舌足らずの表現になってしまったのかもしれません(苦笑)。

この発言に、アジア女性基金大沼保昭氏が応じて補足する。

二〇〇七年四月に米国議会調査局のスタッフが米国の議員たちに出した報告書は、「日本軍は徴募を、とくに朝鮮半島では直接に実行はしなかったかも知れない」と言ってはいます。しかし、そのすぐ後で「徴用に軍の強制を示すいかなる証拠もなかったという安倍内閣の言明は、日本政府自身の調査を含む元慰安婦らの証言に矛盾する」と批判しています。また、安倍総理が、慰安婦制度の一要素にすぎない徴募の面における強制の有無を強調するのは、軍が慰安婦の輸送、慰安所の設置と運営、慰安婦の管理等、慰安婦制度全体にわたって重要な役割を果たしていたことを無視するものだ、と批判しています。これらの点で、米国議会調査局の専門家の理解と指摘は正確ですね。

ただし、秦教授の「きわめて少なかった」という表現は神経をさかなでかねず、たいした違いはないだろうと思う。もちろん、「甘言による拉致の比率が高かったと推定される」と表現すれば国内で反発が噴き上がるだろうが。
安倍首相の評価については、「なまじ余計な知識」というより、自己に有利な情報しか把握していない状態というのが近いのではないだろうか。同じような評価でも、大沼氏は「一知半解」とやや厳しい表現をしている。

*1:『諸君!』2007年7月号32頁より。強調は引用者。