今回は前後とも原作ありで、展開も描写も大きく変えずに映像化。どちらも嶋津郁雄作画監督らしく、絵は作品の平均的な水準。
「ふろしきタクシー」は、広げた上に乗ると自動的に包まれて、周囲にいる人間が運んでくれる秘密道具。のび太はジャイアンに自分を運ばせるが、調子に乗って逆襲される……
原作者の生前は単行本未収録だった初期作品。どう考えてもジャイアンに逆襲されるのに調子に乗る描写も、山本家をさがす通りすがりの男のとぼけた態度も、まったく原作通り。
しかしそのまま現代にアニメとして映像化すると、落語のような寓話のような原作と違って、登場人物の心情にリアリティが欠けてしまうのが難。ここはアニメで登場人物の性格や判断を表現する描写を足すか、あえてリアリティを欠いた演出を使うかするべきだったかもしれない。
「いつでもどこでもスケッチセット」は、のび太の写生の宿題や、のび太のパパと伯父が古地図制作で論争になったところを、自動的にスケッチする秘密道具で解決。しかし……
後期原作の1エピソード。大長編『のび太の日本誕生』と連続性のある描写で有名だが、今年のリメイク映画化を受けてか、ついにリニューアル後に初映像化された。登場するスケッチが、ちゃんとリメイク版の情景と合わせている。
珍しい出木杉の登場も原作通りで、パパと伯父の論争も*1、しずちゃんをめぐる顛末も逸脱はない。原作読者としては驚きはないが、間延びを感じることもなく、これはこれで良いアニメ化ではあった。
*1:アニメオリジナルは、途中まではあっていたというアドリブのような伯父の台詞くらいか。