法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』どこでも大ほう/重力ペンキ

本日はどちらも初期の原作短編あり。幼年向きに描かれた簡潔な物語を、ギャグの前半はそのままに、感動できる後半はふくらまして展開。
前後半ともにコンテ演出は八鍬新之介で、丸山宏一が作画監督


Aパートの脚本は相内美生。人間を大砲に入れて目的地へ向かって撃つという、藤子F先生が人間大砲をモデルに左手で描いたようなシュールな話を、そのままアニメ化。
そのまますぎてキャラクターの思考がおかしすぎて、ギャグとしての完成度が異様に高い。なんで普通に銀行強盗が秘密道具を使わせろと通りすがるんだ。


Bパートの脚本は水野宗徳。のび太達は、友達の家でクリスマスパーティーを開こうとして、あまり周囲とうちとけないあばら谷も仲間に誘った。じゃんけんの結果、あばら谷の家でパーティーすることに決まったが……
小屋に住む子だくさんの貧困家庭という絵面は、現代だからこそリアリティが増している。珍しく誰も困らず、秘密道具の力によってだけでなく、子供達や家族が思いやって幸福をえる結末が素晴らしかった。
やはり原作と同じ展開だが、細部のふくらませかたが良い。原作通りパパが棚を作る描写に、クリスマスプレゼントという理由を語らせたり、流れを変えず叙情性を増していた*1。特に、あばらや君の家が見つからずパーティーを取りやめようかという意見が出た時、あばら谷が待っているとジャイアンが主張し、パーティー続行を宣言する流れが素晴らしい。いかにもジャイアンらしい独善と表裏一体の信念が感じられた。
サブタイトルのドラえもんがサンタクロースの帽子をかぶっている演出も小粋。


それにしても後半は、小さなボロ小屋でも工夫して飾りつけて楽しむ光景にジャイアンの声が重なって、『輪るピングドラム』感がすごかったな。

*1:パパの棚が壊れる場面のギャグセンスは原作に軍配をあげたいが。

『クレヨンしんちゃん』玄関の大そうじだゾ/『SHIN-MEN』#8 カレーでガッカリ〜大作戦!

Aパートは平井峰太郎コンテ演出。玄関を掃除するため靴を移動させるというだけのネタで、時間いっぱいをもたせたところが良かった。
Bパートはムトウユージコンテ演出で、末吉裕一郎一人原画。さすがに作画は良かったが、湯浅政明監督の稚気や毒がすっかり抜けてしまっている。特にゴウの性格が通常のしんのすけと変わりばえしない。やたら可愛い女性キャラが多数登場したことだけは見ごたえあったかな。

『輪るピングドラム』20th station 選んでくれてありがとう

いろいろキャラクターが登場してきたが、今のところ人間と思われる側は、大きく二つの立ち位置にわかれていたことが明確になった。
思っていたより狭い範囲の人間関係に整理されたが、同じ出来事に対して被害と加害という異なる立場を描いていて、さらにそれぞれの立ち位置内でも齟齬があるので世界観は小さくなっていない。


でまあ、左翼としては、選ばなければならないようしむける社会そのものが間違っているといわなければならないんだろう。

『借りぐらしのアリエッティ』

TVで視聴。BGMが少し寸断されたように感じたが、ところどころカットされているのかな?
深い話でも何でもないが、小人の目線を導入してスタジオジブリの作画と美術を楽しませ、娯楽小品としての完成度は高かった。サイズの違いは基本的に画面設計と音響演出で表現し、作画での差異は液体の粘性が異なる一点にしぼったことで、世界観が作品を通して無理なく統一されていた。
ただ、家政婦が小人に執着する理由に納得いくものがあれば、もっと素直に楽しめたかな。悪人とも善人ともつきがたいし、そういう人間の複雑さについて注意喚起している作りでもない。主人公にとって障害のための障害としか感じられなかった。これなら冒頭で烏が襲ってきたように、ただの動物でもいい。