法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ケロロ軍曹』と、平和都市ヒロシマ

ポコペン*1へ侵略しにやって来た宇宙人が、間抜けに失敗して地球人にいじられるようになり、やがて侵略者被侵略者の間に心の交流が生まれたり生まれなかったりするマンガ『ケロロ軍曹』。サンライズによりアニメ化され、テレビ東京系列で放映されている。
しかしこの人気アニメは、広島では放映されていなかった。侵略者であるケロロ軍曹が日本軍を思わせるキャラデザインとなっている等の理由で、広島の市民団体の影響で放映できないという噂がWikipediaで流されていた。
広島県で『ケロロ軍曹』が放送されてなかった理由 - ARTIFACT@ハテナ系批判的に紹介しているページより

ケロロ軍曹 (アニメ) - Wikipedia

中国・四国地方では、TXN系列局(テレビせとうち)が見られるエリア以外では全く放送されていなかったが、これはスポンサーの関係に加え、地域的背景も関係すると思われる。特に広島県内(特に西部)では原水禁平和団体の活動も盛んで、また県東部地区では部落解放同盟等の同和団体や、教職員組合の活動も目立つことから、一部で「旧日本軍(大日本帝国軍)をパロディ・ギャグ化した作品は好ましくない」、「日本人の原罪を誤魔化し、アニメという子供向けの メディアで軍隊を賛美。さらには侵略という言葉をコミカルに表現することで日本を再び軍国主義の時代に洗脳しようとするケロロ軍曹の放送中止と、コミックの発売中止を求める」とする意見などがあったためとも考えられる。実際、広島県内では劇場版の上映館も限られた他、殆ど上映に関するTVCMも流されなかった。また、関連グッズを販売している店舗も少ない。2006年10月の改編で広島ホームテレビテレビ朝日系地方局)にネットされることになったが、前記の事情を考慮したのか、2006年10月10日から深夜枠(26:16〜)での遅れ放送となる。

ほんとかよ! 昭和50年代ならありうる!とか思うけど今こういう縛りってあんまりないと思うけどねえ。その昔『ガンダム』が好戦的だとか批判されたこともあるし。

しかし、そもそも広島にはテレビ東京系列の放送局がないのは上記ブログのコメント欄で指摘されている通り。どうやら、テレビ東京系が映るのが当前と思っている人が多いようだ。
何にしても、昨年末から今年初めにかけて、テレビ朝日系列の広島ホームテレビ深夜で『ケロロ軍曹』が半年間、一期から二期の主要回が放送されている。


目立たない深夜アニメだから許されたのだ、という往生際の悪い主張もWikipediaには載っていた。しかし6月4日15時50分から広島ホームで『ケロロ軍曹』三期が始まる。広島で平和団体を恐れて放映できなかったという噂は、完全に破綻した。
今年初頭の広島では、ケロロ軍曹を中心とした吉崎観音展なるイベントも開かれていた。


ちなみに韓国でもケロロ軍曹は大人気。異例の劇場公開もされた。
劇場版ケロロ軍曹、5月公開?! : 韓国人、嫌韓を見る
こちらは本当に問題視するむきもあったが、侵略者が侵略を忘れて現地人と仲良くなる内容で逆に良いマンガという雰囲気になったらしい*2

*1:地球のこと。このネーミングは注意。アニメではペコポンに変更されている。

*2:現地人と仲良くなる侵略尖兵という物語は、わりと古典的かつ類型的であり、前時代的差別観を底に持っていなくもないが、調理の上手さで気にならない。この種の物語構造が実際に差別的として批判された例に『ムーラン』や『ポカホンタス』がある。

ちなみに広島ホームテレビといえば

ペルー人質事件で記者が単独行動してスクープをものにしつつ、日本のマスメディア多くから批判された会社である。
http://triton.soc.rikkyo.ac.jp/~hattori/1997-1.html*1
個人的には、地方の小さな放送局なのに骨のあるジャーナリストがいたことに感心した。批判があること自体はしかたないとしても、むしろ批判に走って“仲間”を擁護しない日本メディアに落胆したものだ。

*1:スクープ問題以外にも、いろいろ考えさせられるページ。ちなみに占拠集団に対する朝日読売毎日3新聞の見解を比較しているが、取り上げられてない新聞は購読者が少ないからと考えられる、常識的に。

『ケロロ軍曹』102話 ケロロ小隊 ペコポン!!滅び行くか愛の星よ!!であります

地球の生活を楽しんで侵略をなまけていたケロロ軍曹に業を煮やした本星から、別の部隊がやってきてケロロ軍曹達と反目し……という展開。
いわゆる戦争アニメではないが、全地球が静止して、抵抗できるのはケロロ軍曹達と同居していた地球人達だけという展開は、なかなか心に来るものがある。


わりとハードに侵略が進行する二期ラストの連続3話、その特に出来が良いと感じる山口晋コンテ作画監督担当回。
戦闘の作画や演出には相当に力が入っており、特にパワードスーツを着たヒロイン夏美が空中戦から校舎へ突入する爆発、続いての廊下から階段そして屋上に続く背景動画、二刀流のビームサーベルで雑魚敵を一掃するまで、カットの繋がりによどみがない。
何より、パワードスーツの使用法を夏美に教える録音された声で、息抜きと笑いを作りつつ、それ以前に続いていた日常を思い起こさせる演出が実にいい。情緒と笑いの両立。


次が原作通りのオチでしめた103話なのは、子供向けアニメとしてはしかたないところか。
以前の各話にゲスト的な登場をしたロボット群が大挙して出撃する映像はさすがサンライズだけあって満足できるものであったし、地球側主人公の少年冬樹とケロロが心を通じさせる流れも王道な良さはあったが、もう少し敵側にもドラマがあればと思った。