法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

TVアニメ『機動戦士ガンダム』で第39話でしか登場しないシャリア・ブルが新規で登場する、隠れたアニメ作品

 監督自身によるノベライズではそこそこ重要な役目だったとはいえ、今年に入ってから予想外に注目されるようになった敵キャラクター、シャリア・ブル。

 キャラクターデザイナーによるコミカライズでも登場しつつ、その出番まではアニメ化されなかったが、実はそれ以前の2007年に完全新規アニメで登場したことがある。


 プラモデルのオマケや宣伝映像として、キャラクターからモビルスーツと呼ばれる巨大ロボットまで3DCGで描写する短編アニメシリーズ『GUNDAM EVOLVE』。

 そのシリーズを収録した3巻目のDVDに特典として新規に入れられた最終15作目が、第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」から台詞などは引きつつシャリア・ブル視点で再構成したものになっている。

シャリア・ブルの全身設定画。
シャリア・ブルの顔や表情の設定画。

 シリーズ全体を正直にいえば、短編とはいえリソースも少なく、当時の技術力ではキャラクターを違和感なく描写することができていなかった。坂井久太キャラクターデザインの米たにヨシトモ監督による13作目などは手描き作画で見たかったものだ。
 しかし15作目は手描きの新規デザインは魅力的だが、最終作だけあってモデリングなども違和感なく、リアルな陰影で3DCGの長所をひきだしつつディテールをごまかし、見られる映像になっていた*1

屋内で上半身だけ逆光で映るシャリア・ブル。
上から照明がふりそそぐ空間で、左奥にララァ・スン、中央やや右にシャア・アズナブル。
人物を横から映した構図で、中央手前にシャリア・ブル、右奥にシムス・アル・バハロフ。

 また、プラモデルの宣伝という制約がなくなったためか、登場するメカニックはデザインを大きくアレンジしている。ガンダムの胸部の黄色いフィンの位置どりの解釈が大胆だ。

RX-78ガンダムの全身設定画。

 シャリア・ブルの搭乗するブラウ・ブロも、黒々とした宇宙に赤黒く光る触手をどこまでも伸ばすモンスターのように描写され、静止画では魅力をつたえられないが面白い戦闘シーンが展開された。
 ちなみに監督の百瀬慶一は音楽プロデューサーや音響監督としてアニメに参加してきたという異色の経歴で、しかし奇をてらうことなく短編としてきれいにまとめていた。

*1:それぞれエピソード開始から4分50秒、8分32秒、9分8秒。