Amazon独占の大作WEBドラマ『ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪』が、配信直後から多くの視聴者を集めつつ、一部エルフの黒人俳優起用が批判的な話題になっているらしい。
『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』に群がるレイシストたちに対してトールキンガチ勢のアフリカ系のライターが「君たちトールキンのことちゃんと知ってる?」と典型的な批判に一つ一つ反論する記事。必読。 https://t.co/8ZpIrDDy8O
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) 2022年9月3日
『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』に群がるレイシストたちに対してトールキンガチ勢のアフリカ系のライターが「君たちトールキンのことちゃんと知ってる?」と典型的な批判に一つ一つ反論する記事。必読。
www.hollywoodreporter.com
原作や関連資料の原文をしらべた森瀬繚氏も、すべてのエルフが黒人が演じられない肌の色をしているとは断言できないことを指摘している。
#ダークエルフ #力の指輪 中つ国における“暗闇のエルフ Elves of the Darkness”、あるいは“暗闇エルフ(Dark Elves)”、さらにエルフの肌の色についての簡単な覚書。
— 森瀬 繚@R・E・ハワード、H・カットナー翻訳中 (@Molice) 2022年9月3日
#ダークエルフ #力の指輪 中つ国における“暗闇のエルフ Elves of the Darkness”、あるいは“暗闇エルフ(Dark Elves)”、さらにエルフの肌の色についての簡単な覚書。
さてWEBドラマ版は映画版のピーター・ジャクソン監督が関与しかけたが、さまざまな経緯でとりやめになった。
それをつたえる一ヶ月前の報道に、下記のようなくだりがある。
『ロード・オブ・ザ・リング』ピーター・ジャクソン監督、ドラマ版には一切関与せず ─ 製作陣、契約上の都合で断念 | THE RIVER
ジャクソンの起用にこだわっていた幹部も2019年にスタジオを離れたほか、『指輪物語』の権利を管理するトールキン財団がジャクソンの関与に反対していた(原作者の息子であるクリストファー・トールキンは以前から映画版に批判的だった)こともわかっている。
つまり『ロード・オブ・ザ・リング』は映画版よりもWEBドラマ版こそが原作側の意向にそっていると考えられるのだ。
もちろん作者の意向がどうであれ、読者が自身の価値観にしたがって評価することは自由だ。
設定の一貫性などでは、妥協もしながら完成させる作者より、作品そのものを完成品とみなす読者がこだわることも珍しくない。
それどころか映像化は専門ではない原作者が関与したからこそ、読者からも評価が落ちたと思われる作品も少なくない。
それを逆にいえば、映像化の改変を否定したい時、やはり原作者の意向や原作者への敬意を絶対的な根拠にすることはできない。
また一般論としては、原作の版権を管理している子孫だからといって、必ずしも作者の意向にそっているとは限らない。
しかし先述の記事にあるクリストファーは父親の執筆にも協力して、遺稿の編纂出版をおこなうくらい作品制作とかかわりが深かった。
クリストファ・トールキンが死去、『指輪物語』作者J・R・R・トールキンの息子
1973年に父親のJ・R・R・トールキンが亡くなったのち、クリストファーはトールキン財団の遺作管理者となった。同氏は『指輪物語』の未発表の原稿をまとめ、編集し、1977年に『シルマリルの物語』、2018年に『The Fall of Gondolin(原題)』を出版した。
クリストファーは『指輪物語』に収録されている中つ国のマップも描いている。
厳密にいえば、制作中にクリストファーが亡くなったため、WEBドラマも完成形は意向にそっていない可能性はないではない。
それでも現時点では映画版より原作側が求めた映像化に近いと考えるべきだろう。