法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

トランス女性が優勝したと話題の自転車競技は、最初からトランスジェンダーにひらかれた部門

ロンドンでおこなわれた自転車競技で、まず現地で差別的な反発があり、それが日本にもちこまれて注目を集めているようだ。


ロンドンで開催されたサイクリングレース、自称トランス女性(身体男性)が1位と2位を独占し、勝利のキスを見せつけた。

一方、3位の女性選手は幼児を腕に。

まさにジェンダーイデオロギーの縮図と話題。

現時点で約1万7千のいいねを集めており、リプライや引用リツイートも同調する意見がならんでいる。


すでにロイターによるファクトチェックがおこなわれ、最初からトランスジェンダーも参加できるよう定められた部門と指摘されている。
www.reuters.com
その背景について説明する文章を、文中のリンクを排しつつ、google翻訳を手直しせず併記して引用しよう。

The posts are lacking in context, however. The photograph showed the winners of the ThunderCrit “Lightning Category” race, organised by the North London ThunderCats Black Metal Bicycle Club (here).

The “Lightning Category” race is open to cis-women as well as “non-binary people whose physical performance aligns with cis-women” and “trans men and women whose physical performance aligns most closely with cis-women” (here).

Meanwhile, the “Thunder Category” race is designated to those who are cis-male, “non-binary people whose physical performance aligns most with cis-men" and “trans men and women whose physical performance aligns most closely with cis-men" (here).
ただし、投稿にはコンテキストが不足しています。写真は、ノースロンドンサンダーキャッツブラックメタル自転車クラブ(こちら)が主催するサンダークリット「ライトニングカテゴリー」レースの優勝者を示しています。

「ライトニングカテゴリー」のレースは、シスの女性だけでなく、「身体的パフォーマンスがシスの女性と一致する非バイナリーの人々」と「身体のパフォーマンスがシスの女性と最も密接に一致するトランスジェンダーの男性と女性」(ここ)に開かれています。

一方、「サンダーカテゴリー」のレースは、シス男性、「身体能力がシス男性と最も一致する非バイナリーの人々」、「トランス男性と女性の身体能力がシス男性と最も一致する」の人々に指定されています。 (ここ)。

被害者のように位置づけられている3位入賞の競技者が、実際は競った相手をたたえるツイートをしていることも紹介されている。

The contestant who placed third and was seen in the photo holding a child said on Twitter: “Thanks for your concern, but I am delighted with my podium, super proud to be part of the team that organizes such an inclusive and exciting event, and proud to race with such awesome competitors” (here).


3位で子供を抱いた写真に写っている競技者はツイッターで次のように述べています。そのような素晴らしい競争相手と競争することを誇りに思います」(ここ)。

昨日サンダークリットで表彰台を獲得したことについてメッセージを送ってくださった皆さん、ご心配をおかけして申し訳ありませんが、このような包括的でエキサイティングなイベントを主催するチームの一員であることを非常に誇りに思い、このような素晴らしい競争相手と競争できることを誇りに思います。
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実は冒頭でツイートを引用した「🇺🇸Blah🔥Come and take it🔥@yousayblah」氏は、ぶらさげたツイートでトランスジェンダーにひらかれた競技とは説明している。


主催者は現代ジェンダー観に合わせ男女枠を廃止。

しかし「サンダー」(男性と男性に近い身体能力のノンバイナリ&トランス男女)、「ライトニング」(女性と女性に近い以下同上)と枠の名前を変えただけ。

しかもノンバイナリとトランスは自己申告制。当然皆女性枠で出場。
https://thundercrit.com/race-categories/

わたしは「トランスジェンダーにはトランス枠を設けるべき」というのに反対。

それは社会が「性自認」という妄想を肯定することになる。

自分を肥満と信じる痩せた拒食症の「肥満自認」も、盗聴されていると感じる統合失調症の「違和感」も社会は肯定しないのに、なぜ性自認は扱いを変えるのか。

ただし上記で引用したように、トランスジェンダーのみが出場できる枠をつくることも否定している。性自認という概念を全否定するために。


しかし現在の日本のインターネットでは、おそらく性自認にあわせた性転換手術や戸籍変更などは受けいれられつつ、優遇されることへの不公平感のみが重視されやすいのだろう。
「🇺🇸Blah🔥Come and take it🔥@yousayblah」氏の最初のツイートばかりが匿名掲示板やまとめブログにきりとられ、女性競技にトランス女性が出場したと単純化されて拡散されている。
b.hatena.ne.jp


また、引用リツイートしている何人かの著名人も、やはり最初からトランスジェンダーもふくめた枠組みの部門と気づかずに論評しているようだ。


こんなの間違ってる
これ程女性が侮蔑され攻撃されることはない
自由ではなく攻撃
彼らは、”彼ら”と呼ぼう
彼らは、社会を壊すために使われている武器


3位の女性選手、不平を口にすることはできない。なぜなら口にした瞬間に差別者認定され、パージされてしまうからだ。彼女は子供を抱いて登場することで、トランス女性と女性は違う存在であることを示そうとしているかのようだ。無言の抗議だ。心が痛む。


女子スポーツが絶滅の危機に瀕してる。


スポーツは人間の運動能力を競うもの。しかし肉体が女性の人はなかなか人間のトップレベルには行けない。だから女子部門を作った。肉体男性には女子部門に出る資格はない。心が女とか男で分けられているものでは元々ないからだ。今後は全てのスポーツは人間部門と肉体女子部門にするべきだろう。


「男女」ではなく「XX/XY」で分けるべきじゃないかなぁ。

これは単なる言葉の言い換えじゃない。性自認その他の要素を一切無視した「遺伝子による身体の違いのみに基づく分類」という事。

その上でロッカールームの区別などを導入すればいい。

那覇氏のような保守派はともかく、何人かの「表現」関係者が入っていることには少し悩む。
葛西氏のみ、おそらくトランスジェンダーが異性のシスジェンダーと望まず近づけられた場合の性加害について考慮する違いがあるものの*1、やはり競技の背景は確認できていない。
被差別者を物語の素材として利用することは、必ずしも現実の差別に向きあうことにはつながらない。つながることもある、と信じたいところだが……

*1:ホルモン量ではなく染色体をもちだすところなどの違和感もあるが。