法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『BUTA』

ある裕福なキツネの家が海賊に襲われ、宝の地図と末子をうばわれる。一方、酒場のケンカでブタは海賊に腕っぷしを見こまれ、用心棒となる。
しかし海賊船の牢屋にとらわれていたキツネ少年の作戦で、ブタ用心棒は海賊と敵対することに。そしてブタ用心棒はキツネ少年を助けて宝を目指す……


若手アニメーター支援事業の「アニメミライ2012」*1に選ばれた、テレコム・アニメーションフィルムの企画。Eテレで3月4日と26日に放映された。
3月のEテレは、アニメ映画がもりだくさん! | NHKアニメワールド

腕っぷしの強いBUTA(ぶた)が、用心棒として雇われ、連れて行かれた先は海賊船だった!船底には、家宝の地図と共に誘拐されたキツネの少年が捕らわれていた。急にキツネの用心棒にくら替えしたブタは、大立ち回りの末に、海賊トラフグ一味からキツネを救い出し、ふたりは一路、キツネのふるさとへ向かったが…。


声の出演:てらそままさき、沢城みゆき、咲野俊介、雪野五月

おそらく新型コロナで中止となった「あにめたまご2020」上映会*2の宣伝として、Eテレで地上波初放映したのだろう。


デフォルメされた擬人化動物の時代劇だが、老舗のテレコムらしく技術的には完成度が高い。若手の育成にふさわしい内容でありつつ、それを抜きに評価しても満足感がある。
まず企画として、多人数がいりみだれるケンカや、海上を漂流していく中盤など、アニメーターが力を発揮できるシチュエーションを多様に用意。殺陣も芝居もダイナミックかつ繊細に動かし、机の下に隠れた視点など難しいレイアウトもそつなくこなす。キャラクターデザインは可愛らしくもシルエットで区別できるくらい明快。サプライズとして暴れまわるカラクリ巨大ロボットも重量感たっぷりで、木造の足場を崩していく作画もていねいだ。
単純に作画がいいだけでなく、縦書きの筆文字テロップといった映像全体のパッケージもすぐれている。


物語も冒険活劇的な時代劇として必要充分にまとまっている。
特にブタの性格が良い。寡黙で強いが、よくある善悪にこだわらない性格ですらなく、はっきり犯罪者の思考で動いている。とらわれているキツネ少年に出会っても助ける気は起こさない。海賊と対立させられてしぶしぶキツネ少年に雇われるが、飢えをしのぐため盗みをつづけたりする。
タイムボカン三悪人的な美女が漁夫の利をえようと画策し、状況がうごきつづけて中だるみしない良さもある。巨大ロボットが無駄に自滅していくナンセンスな顛末も、短編アニメとしてまとめるには正しい判断だろう。
全体としては類型的な描写にとどまるが、タイトルにもなっているブタに個性的な毒気があり、いろいろ発展する余地もありそうだ。

*1:公式サイトは生きているようだが、きちんとメンテナンスされていないのか、多くのコンテンツにアクセスできない。アニメミライ[ animemirai ]

*2:代替的にスタジオ収録の紹介番組として、一ヶ月無料配信された。 「あにめたまご2020」全3作品の特別配信の感想 - 法華狼の日記