法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『特集ドラマ バーニング』

村上春樹『納屋を焼く』を原作として、『ペパーミント・キャンディー』のイ・チャンドン監督が映画化。
村上春樹原作×イ・チャンドン監督『特集ドラマ バーニング』がNHKで放送 | CINRA

村上春樹の短編小説『納屋を焼く』の舞台を現代の韓国に移し、物語をアレンジしたミステリードラマ。イ・チャンドン監督は『カンヌ国際映画祭』で国際批評家連盟賞を受賞した映画『バーニング 劇場版』も手掛けているが、『特集ドラマ バーニング』は95分、『バーニング 劇場版』は148分の作品となる。『バーニング 劇場版』は2019年2月1日から公開。

近年のNHKでよくある、制作した映画の短縮版をBSや総合で宣伝のように流して、長尺版を映画祭などに出品するパターンか。


撮影などすべて現代韓国の技術にたより、地デジのハイビジョンでシネマスコープサイズで放映したおかげで、ただの日常風景が舞台なのに映画らしい映像の厚みは感じられた。どれほどワイドサイズでも被写体を画面中央に置く構図の多さが韓国映画らしい。
物語としては、はっきりと明確な答えはない。格差が微妙にある社会を舞台として、居心地の悪さが延々とつづく不快感は印象的。途中で登場した若き実業家の、納屋への放火を趣味にしているという告白から、主人公が走りまわるが何も起きていないように終わる。何か決定的な破滅が起きそうな予感が全編にあふれていて、行方不明になった女性から韓国映画らしいサスペンス展開になりそうなところ、宙ぶらりんの不安感に満ちたまま終わった。
未読の原作も同じような内容なのかもしれないが、やはり長尺の劇場版を見ないと真価がわからない。20世紀の終わりごろの、奇妙な不安感だけを抽出した単発深夜ドラマならば今回のような内容でもいいが。