4人の卒業を前にして、軽音楽部の全員でイギリス旅行をすることに。いつもと違う世界に飛び出た5人だが、やってることはいつもと同じで……
京都アニメーション制作で人気があったTVシリーズの、2011年公開の劇場版。卒業をめぐる2期終盤を、劇場版らしい豪華な舞台で語りなおしている。
映画けいおん!公式ホームページ|TBSテレビ
このシリーズには、卒業しても同じ大学に行くという結論が不自然だという批判が一部であった。しかし、たとえTVのように青春の一時期を狭い空間で切りとらずとも、少女たちの「世界の狭さ」*1はたもたれる。そのことをこの劇場版では「ドキュメンタリー」*2タッチで力強く描きだした。
どのような世界を舞台にしても、アニメーションは実写に比べて制約が少ない。だからこそ、あえて普段どおりのドラマを描くのだという制作者の意志が伝わりやすい。実写ドラマで同じように劇場版の舞台を変えると、ただ予算がついたから考えもなく海外ロケを決めて、しかし舞台に見あった新しい物語を考えつかなかっただけに見えただろう。
狭い世界をどこまで意図的に強度をもって描いているかわからず、あまりTVシリーズは好きではなかったのだが、この劇場版はコンセプトが明確で、ずっと安心して見ることができた。
あと、これも一部で議論を呼んだらしい後輩キャラクターのフォビアチックな台詞は、どちらかというとクローゼットゆえに社会の偏見を内面化したゆえじゃないかな、とか感じた。