法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「noarchive」を設定する新聞社と、オッカムの剃刀

id:scopedog氏が産経の訂正の不備*1を指摘しているエントリを見て、ちょっと思ったことがある。
産経新聞は「訂正・おわび」記事をどう取り扱っているか - 誰かの妄想・はてなブログ版

朝日新聞、慰安婦報道取り下げ英文記事で検索回避の設定 指摘受け解除、「作業漏れ」と説明(2018.8.24 22:42更新 )

この2本の記事には、グーグルなどの検索エンジンの動きを制御し、利用者が特定ウェブページを訪問することを防ぐようにする「noindex」「nofollow」「noarchive」という3つの「メタタグ」が埋め込まれていた。
 メタタグは、ウェブページの情報を検索エンジンに提供するキーワードで、検索しにくくしたり、逆に検索されやすくしたりすることができる。

【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】懸念つきまとうトランプ米政権の北朝鮮外交 北と、北を背後で支える中国に原則貫け(2018.6.4 11:05更新 )
沖縄米兵の救出報道 おわびと削除(2018.2.8 08:00更新)
ピースボート災害ボランティアセンターへの回答書(2016.6.17 15:49更新)

こんなメタタグを使っています。
「<meta name="robots" content="nocache,noarchive">」
何だ、産経も「noarchive」使ってるじゃないですか。
「noarchive」は問題ないと思うなら、上記の記事で取り上げていること自体不適切ですねぇ。

そもそも産経新聞はメタタグが機械的に設定されているらしく、朝日新聞にメタタグが埋めこまれていると報じている記事そのものにもnocacheとnoarchiveが入っている。


ちなみに話題の発端となった朝日新聞は、回答によると作業のミスでメタタグが残っただけだという。
朝日新聞デジタルの記事に「検索回避タグ」が設定されているとのご指摘について | 朝日新聞社インフォメーション

2014年8月22日に慰安婦問題に関する英文記事を複数配信しました。その際、記事に検索回避タグを設定し、社内の確認作業を経たのちにこのタグを解除して一般公開しましたが、このうちの2本で設定解除作業の漏れがあったことが分かりましたので、修正いたしました。

日本語ページの「訂正・おわび」にも検索回避タグが設定されているのではないか、とのご指摘を受けましたが、見出しに「訂正・おわびあり」と明示し、当該箇所を修正、記事の末尾に「訂正・おわび」を追加した記事には検索回避タグを設定しておりません。過去1週間の「訂正・おわび」をまとめた一覧ページに掲載する「訂正・おわび」には、前述の記事と重複するため検索回避タグを設定しています。

もともと朝日が他紙と比べて突出して報じたわけでもなく、それ自体は歴史認識にも特段の悪影響をもたらさなかった*2小さな誤報の訂正だ。さらに知名度の低い外国へ向けて訂正を伝える必然性がさほどあるとも思えない*3。しかも比べて重大だろう他の訂正記事では、重複をのぞいて検索回避をおこなっていないらしい。
もちろん陰謀論をたくましくすることはできる。しかし背景の推測は単純なほどいいという思想「オッカムの剃刀」にならうなら、回答どおりのミスと考えることが現状ではいいだろう。


一方で産経新聞については、どうやら大半の記事にアーカイブを拒否するメタタグが入っているようだ。
単純に考えるなら、産経新聞は自身の報道が記録されることを望んでいないのだろう。ひとつの傍証として、産経新聞は全国紙なのに縮刷版を出していない問題がある。
よくある質問 - 蔵書に関すること|利用案内|広島市立図書館

昭和34年(1959年)以降は朝日、読売、毎日、日経といった全国紙の縮刷版もあります(産経新聞は縮刷版はありません)。

縮刷版を出さないのは批判をさけるためでなく手間をさけるためという可能性はある。しかし、わざわざ機械的にメタタグを入れているとなると、産経の会社としての意向をかんぐらざるをえない。


もちろん、他社がメタタグを入れていたと報じる記事でメタタグが使われているように、ひとくちに産経といっても一体ではない。異なる部署が異なる動機でアーカイブを避けていると考えることはできる。
しかし、朝日新聞のメタタグに意図を見いだす人物が選択的陰謀論者でないならば、産経新聞のメタタグにはいっそう一貫性ある意図を疑ってしかるべきだろう……とも考えることができる。

*1:メタタグ設定は話の枕で、実質的な謝罪記事が謝罪とわからないかたちで配信されていることの指摘が本題。

*2:影響力のある誤報だという誤った観念こそが悪影響をもたらしていると歴史学会の声明で特筆されている。「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 - 東京歴史科学研究会

*3:それでもすでに国連本部や同広報センター、米国議会、在日米国大使館、韓国大使館、米国グレンデール市などに第三者検証委の報告書要約を送っているという。「朝日新聞英語版の『慰安婦』印象操作中止を求める有志の会」への回答書を掲載しました | 朝日新聞社インフォメーション