法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ハー灯に火をともせ/雨男はつらいよ

今回もアニメオリジナルの前半に、原作に忠実な後半。


「ハー灯に火をともせ」は、しずちゃんを元気づけるために、感情を視覚化して強めたり弱めたりする秘密道具が登場。まず野比玉子に使用して、次はジャイアンに使用するが……
原作のアレンジは見事だが、オリジナルストーリーはいまひとつな鈴木洋介が脚本。オリジナル秘密道具のデザインは藤子Fっぽいラインで悪くないが、かなり複雑なシステムを最初から全て出すのが良くない。単体としての機能はシンプルなことが秘密道具の魅力であり、その組みあわせと応用で複雑なストーリーを展開するのが作品としての魅力だ。
まずキャラクターの喜怒哀楽を知るために「ハー灯」という秘密道具を出して、その心情を変えようと思ってカスタム的な水鉄砲を出すという順序にするだけでも、ぐっと原作らしい雰囲気になったと思うのだが。物語そのものも、スネ夫の行動が「まあまあ棒」と同じだけだったり、全体として道具の機能を見せる以上の意外性がない。
あまりに激怒したため静かに目を光らせてスネ夫にせまるジャイアンや、悲劇的なオチを美しい夕焼けがいろどる結末など、映像面はけっこう良かったのだが……『機動戦士ガンダム』の時代から演出家として活躍しているベテラン藤原良二の地力は感じた。


「雨男はつらいよ」は、会社のゴルフで父が雨男あつかいされないため、のび太ドラえもんが奮闘。本当に雨男な父と相殺するため、晴れ男をゴルフ場の近くに呼んでくるが……
2009年6月に中編アニメ化*1した短編のリメイク。季節ネタであると同時に、父の日ネタでもある。今回は尺が少ないこともあり、アレンジはジャイアン型のてるてる坊主を父に見せる描写くらい。
気になるのは作画で、作画枚数は多めでけっこう動いているからこそ、前後のブレが目につく。よりによって今回メインキャラの父が、ロングショットで常に鼻を大きめに描かれている。作画監督の村上直紀と江上夏樹は充分なキャリアがあるが、少なくとも作画監督としては作品に初参加。
不思議なのは演出の形部正で、検索した限りでは他にアニメの仕事歴が引っかからない。全日本写真連盟のコンテストで同姓同名の人物が「雨は嫌いじゃ」というタイトルで入選しているが*2……本人というよりは、偽名の元ネタという可能性がまだ高い気がする。