「SFで、異星から侵略されたら地球人団結したりするけど」というタイトルの匿名記事を読んで、発想は悪くないと思いつつ、前提に疑問をもたざるをえなかった。
SFで、異星から侵略されたら地球人団結したりするけど
はてなブックマークの反論を読んでも、必ずしも単純に団結するばかりではないという指摘が多い。前提について指摘しているのはid:htbman氏のコメントくらいか。
はてなブックマーク - SFで、異星から侵略されたら地球人団結したりするけど
というか北朝鮮殺せ滅ぼせと言う人たちがまさに、北朝鮮国民をSFにおける異星人のような殺しても問題ない対象として捉えてるような印象がある
たとえば、北朝鮮を独裁国家という観点から批判するならば、その国内で犠牲となっている人民に被害が出る攻撃をためらうことはおかしくないはずだ。
歴史をふりかえっても、対立していた多くの国家を団結させた大日本帝国は、国民もまた政策の犠牲者というかたちで許されたのだ。
そもそもSFにおいてすら、当初から人類を攻撃した明らかな異生物に対してさえ、安易に敵対や攻撃すべきでないと結論づける作品は少なくない。
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自明的な敵をSFの比較としてもちだしたいなら、はてなブックマークで複数のコメントが指摘されているように、東日本大震災のような天災がふさわしいだろう。
そうした現実の天災を思い返せば、マイノリティを異物として敵視する愛国者がいた。団結を絵空事と考えることが団結をさまたげるという、思想の自己成就だった。
尖閣諸島衝突事件の映像を漏洩した元海上保安官が、「善良な市民」になっていた - 法華狼の日記
その場所にいただけで「犯罪」と呼ぶ思考こそが恐ろしい。もし外国人であったとして、ただたたずんでいた老夫婦に何の罪があるといえるだろうか。
今回の政治情勢においても、国内のマイノリティへの敵視を強めて、むしろ対立関係を強固にしようとする動きがある。
北朝鮮核実験:朝鮮学校に抗議、教諭ら戸惑いも - 毎日新聞
都内の朝鮮学校には核実験に対する抗議の電話が数件あったという。50代の男性教諭は「抗議を受けて戸惑っている。生徒への嫌がらせがないか心配。これ以上、対決姿勢が強まってほしくない」と不安そうに話した。
さらに、たとえ自明的な敵という意識が共有されたとしても、足並みをそろえるまでは対立が生まれることはあると考えるべきだ。
現実の日本政府の対応を見ても、むしろ首相が何度も自宅に戻っていることが危機感不足だと野党に指摘されたりもしている。
http://www.asahi.com/articles/ASK945G01K94UTFK00P.html
民進党が、核実験当日に安倍晋三首相が自宅と首相官邸などを行ったり来たりしたことを問題視。危機管理の観点から常に首相公邸に泊まるよう求めた。
最終的に団結して戦うことで爽快感をもたらすような物語においても、敵が登場したとたんに対立が解消されることはない。たいていの作品が、統一された「意志の勝利」*1にたどりつく過程で楽しませるものだろう。なかには団結する過程で起きる戦争をテーマにした作品すらある。
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そもそも共通する敵がいれば団結できるという考えは、敵を求める思想が根本では変わっていないということ。そこでの団結が絵空事になるのは、非現実的なためではなく、内在する論理によってだ。
共通する敵のため団結する物語を絵空事でなくそうとすれば、最終的には敵とも団結しようという願いにたどりつくのではなかろうか。その模索を描こうとした作品もある。
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*1:もちろん映画が元ネタ。