法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』

悪夢が具現化して街を襲う「ナイトメア」に対して、協力して戦う5人の魔法少女がいた。そのひとり暁美ほむらは、戦う日々に小さな違和感をいだく。
佐倉杏子とふたりで違和感を解明しようとする暁美だが、街から出られない意味すらわからないまま、魔法少女の関係も崩れていく……


前後編のTV総集編映画の後、2013年に公開された完全新作映画。監督脚本キャラクターデザインといったメインスタッフはTV版から続投。
「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」公式サイト
AbemaTVで4月16日21時からと、4月17日19時から初無料配信される予定。
https://abema.tv/channels/anime24/slots/8ZguwhsQhNwRPd
一種の自己犠牲をへて、ビターなりに悪夢をぬけだしたはずのTV版最終回。それとも異なるパラレルワールドのような状況に見える劇場版だが、TV版と密接な物語が明かされていく。
新たな悪夢をつくりだした黒幕の動機は、TV版の結末の関係をふまえても納得できるものだった。探偵役をつとめる暁美の役割りの多重性も、ある種の本格ミステリに近い趣向。
さらに「三叉路」の真相を堂々と見せる手法は、映像作品でしか提示できないトリックが素晴らしい。表現主義的な描写が多いことと、大胆すぎることがあいまって、観客は見ているはずなのに気づかない。新房総監督は『サスペリア』に影響を受けているが*1、この真相を見せる手法は『サスペリアPART2*2に影響されているのかもしれない。


敵を華やかに退治するビジュアルや、魔法少女同士のアクションなど、TV版に通じる多様な娯楽性を*3、より濃厚に再演しつつ、映画らしいビジュアルをきちんと展開できていることも魅力的。
ひとつだけ残念なのは魔女同士の戦いで、せっかく巨大な者同士なのだから怪獣映画のように巨大感や重量感を表現してほしかった気分はある。表現主義的に魔女の質感を変える趣向をつらぬくにしても、3DCGを使用することなどもできたはず。


そしてTV版と同じ物語構成で一種の自己犠牲で救われるかに見せて、新たな視点をくわえた結末も良かった。TV版では秘密を知られることで承認されて救われた暁美だが、この劇場版では秘密を隠して相手を救おうとする。
TV版の物語を巻き戻したかのように見えて、しかしTV版の初回と劇場版の結末で見える風景は異なる。かつての暁美は秘密を理解してほしいと願っていたが、劇場版の結論はそうではない。秘密をもつことでこそ対等でいられるかのように、堂々と孤立した個人でいることを選ぶのだ。

*1:新房昭之演出の源流映画『サスペリア』がGYAO!で配信予定 - 法華狼の日記

*2:GYAO!で4月20日まで無料配信。https://gyao.yahoo.co.jp/p/00569/v08465/ 大ヒットした『サスペリア』に便乗するため、同じ監督の過去作品にシリーズ作品であるかのような邦題がつけられたが、モダンなサスペンス映画として評価は高い。

*3:忘却のゼロ年代アニメ - 法華狼の日記のエントリおよびコメント欄参照。