法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『残響のテロル』がJAPAN EXPOで金賞を受けたとのこと

たまたま録画を見返していたので驚いた。
「残響のテロル」がフランスJAPAN EXPOで金賞受賞 | アニメ!アニメ!

フランスで開催された日本文化の総合イベントJapan Expoが行うJAPAN EXPO AWARDSにて、ダルマドール・アニメ(金のダルマ賞アニメ部門)を受賞した。

今回アワードを実施したJapan Expoは、4日間で24万人以上が来場する日本文化の巨大イベントとして知られている。今年で17回目の開催となる。
残響のテロル』が受賞したダルマドール・アニメはプロフェッショナルな選考委員によって授与されるアニメ部門で最高峰の賞となっている。


リアルタイムで視聴した時は不満や疑問を多くもった作品だったが、真相を知ってから視聴すると細部に伏線があったことは理解できた。
『残響のテロル』11 VON - 法華狼の日記

つまるところ、視聴側の期待や予想をコントロールできないことが大きな問題だった。もっと情報の出しかたを変えていれば、ほぼ同じ物語でも評価は変わっていたかもしれない。

たとえば、直接的な殺人はしないというナインやツエルブの制約を最初から示すべきだったのではないか。制約内でできるだけ大きな騒動を起こす展開が楽しめたかもしれないし、その手段に原爆まで持ちだすことに驚けたかもしれない。

たとえば最初の新宿都庁爆破において、火災警報で人々を退避させる過程を記憶より長く描いていた。やはり問題は、たまたま都庁で逃げ遅れたヒロインを、救うか見捨てるかで葛藤するナインとツエルブの態度。真相を知った後で見返すと、論争する形式でヒロインを救う決断をせまっている会話だと理解はできる。しかし序盤の引きとなるドラマが、その後に示されるキャラクター性と乖離していることは変わらない。そう最初から殺さない意図をわかりやすく見せても、爆破するまでにヒロインを救うタイムリミットサスペンスは展開できただろうし、そうすべきだった。
ナインやツエルブをテロルに走らせた人体実験についても、架空性の高い設定だからこそ序盤から明示するか、計画名などは完全に闇に葬られておくべきだった。テロを追う警察側に因縁をもった人物を配置しているものの、抽象性と具象性が中途半端で、凡庸な陰謀論に見えてしまう*1
そして今回にフランスで高評価されたのは、人体実験設定の陳腐さや架空性について、日本の視聴者と異なる印象をもったおかげもあるかもしれない。「アテネ計画」のような名称も、たぶん日本の視聴者ほどには現実離れしたものとは受けとられないのではないか。

*1:ほとんど同じ真相だった『輪るピングドラム』は、描写を抽象性にふりきって、実在の新興宗教事件をモデルとすることで、うまく陳腐さをまぬがれた。