法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の第8話について応答と補足

前回のエントリ*1に対して、はてなブックマークで複数の反論と疑問があった。納得できる部分もあり、自信の説明不足と感じた部分もあるので、いくつか返事をしておく。
はてなブックマーク - 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の第8話もPC面で問題あったと思う - 法華狼の日記

id:angmar うーん、同性愛蔑視を分かりやすい悪役として措定する単純さの是非は別として、そのあたりを上手く整理できない主人公の未熟さを以って「問題」とするのはどうなの。善なる価値観が常に勝利しないと粗悪描写? 2010/12/07

もちろん、主人公はアニメやマンガやゲームにくわしくないキャラクターだし、未成熟なキャラクターではあるから、他のフィクションを持ち出したり、ホモフォビア批判を展開するのは不自然だと思う。エントリでは「主人公側」と表記していることに注意。
私が疑問に思ったのは、id:sasahira氏が指摘するように、主人公以外にマンガやアニメを強く好むキャラクターが2人もいること。ここで「百合」が全く言及されないのは不自然ではないかと思う*2。逆にいうと、他の百合作品の存在を作中キャラクターが指摘し、対するアニメスタッフも対象視聴者層や売り上げ等を理由として反論し却下した描写があれば、エクスキューズと理解しつつ同時代的なリアリティも感じたと思う。物語で最終的に「善」が敗北すること自体は全くかまわない。
もちろんid:fudsuki氏の指摘するように、描写を増やすなら増やすで尺の問題がかかってくることも理解する。ただし尺の問題で描写しなかったのであれば、なおさら視聴者側が補完してしかるべきではないかと思う。

id:Mukke アニメ, 性, 差別, 人権 ちなみに俺の知る限り最悪の自虐ネタは,表現の禁圧に抵抗する主人公を描いているはずの『図書館戦争』アニメ化において,聴覚障害のヒロインの出てくる回をTV放映では自主規制かけて流さなかった件。 2010/12/07

確かに、規制の理由自体が意味不明だった。SF作家の山本弘氏が自作に対する機械的な自主規制も紹介しながら、合わせて批判していたことでも強く印象に残っている。
山本弘のSF秘密基地BLOG:毬江がテレビに出なかったわけ
そういう意味では、私自身も『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を規制すべきとは思っていないことは改めて書いておきたい。
そもそも作品に対する形で批判するべきかという点でも悩みながらエントリに記録したわけでもある。ここで先述した「補完」の自己解説をすると、描写された問題が作中で明示的に問題と扱われていなくても、読者や視聴者側が問題を感じたり指摘することで完結する作品というのもありうるだろう。この場合、作中描写への批判と作品への批判は別次元の話となる。

id:sirobu アニメ 女性エロゲーマーが抱く「ヒロインキャラが好き」って感情は概ね同性愛じゃないし、桐乃の妹キャラ好きも同性愛じゃない。よってアニキが「同性愛は悪くない」と批判する必然性もない。 2010/12/07

必ずしも兄が批判する必要を感じているわけでないことは先述したとおり。
また、「桐乃の妹キャラ好き」が一般的に思われている同性愛と違うことは確かだと思う。ただし、セクシュアリティが一般的な観念のそれでないことは、それを尊重する必要がないことには繋がらない。アニメスタッフ側の言い回しを工夫することもできただろう。

id:WinterMute 差別, セクシャリティ 俺も編集に、感情移入できないから同性愛やめてください、って言われたことある。もう10年以上前の話だが。そのへんいまだに「リアル」なのかも/見てないので反論云々は保留。悪役になってるならそれでいい気もする 2010/12/07

なるほど、アニメスタッフ側の発言は似たような実例があると。情報感謝。
いわれてみれば、成年向けマンガでセクシャルマイノリティを扱うと売り上げがかんばしくないから嫌われるという話は、漫画家側のインタビュー発言等でいくつか見聞きしたことがある。その意味でアニメスタッフ側の発言にはリアリティがあったと考えるべきか。

id:babamin アニメ, 俺妹 ネタバレになるけど、「作中でのホモフォビアに対する扱い」に関しては、今後登場する腐女子キャラSの存在が重要なので、そちらに対して批判を加えた方がより正確かなぁと。まぁ出番は2期以降になりそうですが。 2010/12/08

原作小説は全く未読なので、明示的にそのような描写があることも知らなかった。情報感謝。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20101206/1291656778

*2:他にも幾人か指摘しているように、倉田英之脚本で何人か同性への思慕が描写されている女性キャラクターがいたことも確かだ。だからこそ、ことさら不思議に思ったのだ。