法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん(1)|藤子・F・不二雄 大全集』

大全集第1期の目玉であった『ドラえもん』の第1巻。てんとう虫コミックスどころか藤子不二雄ランド等もふくめて、単行本初収録のエピソードが入っている。
ドラえもん(1)|藤子・F・不二雄 大全集|小学館
学年ごとに1巻ずつという方針がこの巻だけ崩れているが、ほぼ時系列にそって収録されていることで、過去の単行本にはない面白味がある。
以下、各エピソードの簡単な感想を書いていく。サブタイトルに星マークがついているのは単行本未収録。


「★新連載の予告(小四 69年12月号)」ドラえもんのキャラクターが決まらず、机から「出た!」という文字が飛び出しているだけの1頁。たしかに単行本未収録だが、関連書籍などで何度となく紹介されたカットなので、特に新鮮味はない。
「未来の国からはるばると(小四 70年01月号)」てんとう虫コミックスに収録された、最も有名な第1話。基本的に原作ののび太は「しずちゃん」と呼ぶが、この大全集では「しずかちゃん」と呼んでいる*1
ドラえもんの大予言(小四 70年02月号)」しずちゃんに呼ばれたのび太が、未来のアルバムにもとづいて交通事故を回避しようとする。タイムテレビを使ったり、秘密道具の出番が多め。しずちゃんが呼んだのは、あくまで留守番がたいくつだからというのがポイントで、つごうのいいヒロインではないことがオチで明かされる。
「けんかマシン(小四 70年03月号)」スネ夫が登場。ジャイアンスネ夫にいじめられつつ、のび太をいじめて発散する少年も出てくる。


「机からとび出したドラえもん(小三 70年01月号)」藤子不二雄ランドに収録された、「未来の国からはるばると」の前半をリメイクしたような第1話。未来の姿はタイムテレビでうつしだされる。のび太が宝くじに当たったから会社をつくれたという説明があったり、みんなとトランプする場面でジャイ子もいたり、洗練されたつくりになっている。消えたドラえもん設定として、しっぽを引くと姿が消える描写も。
「愛妻ジャイ子!?(小三 70年02月号)」未来のアルバムが登場したり、ジャイ子との結婚話が語られたり、「未来の国からはるばると」の後半にあたるエピソード。頁数に余裕があるおかげか、未来の夫婦生活やジャイ子とのやりとりが多い。のび太の「まけてもいいから、力いっぱいぶつかってやるんだ」という決意を聞いてジャイ子が「かっこいい!!」と尊敬したりと*2、けっこうラブコメらしさがあり、のちにジャイ子の性格が良くなる片鱗を感じさせる。なお、この回も「しずかちゃん」と呼んだり*3、机の異次元でタイムスリップする時にマシンに乗らなかったり*4、設定が未完成。
のび太が強くなる(小三 70年03月号)」学校と教師が初登場。のび太が学校に行きたがらないところを、ママが「おやつあげるから、おこづかいあげるから……」と甘やかすところは初期エピソードならでは*5ドラえもんのフォローも多い。ヒゲを1本でもぬかれると力がなくなるというドラえもん設定が出てくる。
「おいかけテレビ(小四 70年04月号)」スネ夫のテレビ出演エピソード。秘密道具によるテレビ出演に、初登場のスネ夫ママが便乗する。地味に初めてのセワシ未登場エピソードでもある。のちに描かれるパターンの雛形といっていい。
「(秘 )スパイ大作戦(小四 70年05月号)」てんとう虫コミックスに収録された、スネ夫のび太を脅迫するエピソード。スパイする秘密道具で情報をつかみ、脅迫しかえす。しずちゃんと同じコマに女友達がふたりいたり*6、キャラクターを整理していないのは初期ならではか。
「白ゆりのような女の子(小四 70年06月号)」戦時中に疎開していたパパの思い出を描く、有名なエピソード。現在のデザインのタイムマシンが初登場。微妙な絵柄のちがいで加筆がわかりやすいのだが*7てんとう虫コミックス*8からさらに加筆されているためのようだ。
「ロボット福の神(小四 70年07月号)」こわれかけた秘密道具を修理しながら使おうとするパターンの雛形。ロボットの笑い声を聞くと気前がよくなるのだが、強力すぎたり反転したり。
「のぞきお化け(小四 70年08月号)」夏休みにあわせて、観察日記をめぐるエピソード。ドラえもんも知らない謎のキャラクターが登場し、それがオチを担当するという、初期だからこその珍しい構成がおもしろい。しずちゃんに似ているがショートカットの少女が出てくる。
「ああ、好き、好き、好き!(小四 70年09月号)」かわいい少女に秘密道具で愛してもらおうとして、ブスに愛されたり男同士で愛されたりするパターン。今回はのび太が愛されたがるが、しずちゃんが相手ではない。ドラえもんの青色の部分が、縦線だけでなくスクリーントーンを足したような表現になった。
「ペコペコバッタ(小四 70年10月号)」のび太に対して謝罪させようとするが、秘密道具が町全体に広がって、罪の告白と罰の申し出で大混乱が起こる。話がおおげさになる以上の面白味はない。
「わすれとんかち(小四 70年11月号)」頭がパーになるリスクとひきかえに、殴ることで記憶を映写する秘密道具が登場。記憶喪失の男を助けようとする。映写された記憶の矛盾した内容と、シンプルな答えが楽しい。スネ夫が利益を横取りしようとして、スネ夫ママも登場。
「タイムふろしき(小四 70年12月号)」有名な秘密道具が登場。壊れた物を直したことをきっかけに、商売をはじめようとする。のび太の商才がえがかれた初期エピソードといえるだろう。前回につづいてスネ夫ママが登場し、盗んだ秘密道具こそ返そうとするものの、ちゃっかり一度だけ使おうとする。
「のび左エ門の秘宝(小四 71年01月号)」先祖の宝さがしをしようとするエピソード。導入の宝探しゴッコが意味をなす構成が巧妙で、真相を知りながら読んでも皮肉なおもしろさがある。
「好きでたまらニャい(小四 71年02月号)」ドラえもんが恋をするパターン。少しずつ保護者らしくなってきたドラえもんが、恋の病で奇行にはしる。のび太ドラえもんにアドバイスする側にまわるが、キャラクターがぶれているわけではなく、ちゃんとオチがつく。
「★最終回<1>ドラえもん未来へ帰る(小四 71年03月号)」あらすじのみ読んだことがある最終回のひとつ。多くの人間が安易に時間旅行したため、「時間旅行きせい法」が成立する。別れる時のドラえもんは号泣しながらで、つくえを開けてドラえもんを思い出すのび太も抒情性があるが、別れのドラマは薄い。あくまで時間旅行客によるトラブル多発がおもしろさのポイント。


「未来から来たドラえもん(小二 70年01月号)」第3の第1話。ともだちのパーティーで芸をひろうするためドラえもんが助けてくれるパターン。小学2年生向けなためか恋愛要素がない。そのためジャイ子が未登場で、かわりにジャイアンスネ夫の両方が登場している。後年とはちがって、しずちゃんのバイオリンが美しい。
「★やきゅうそうどう(小二 70年02月号)」少年やきゅうチームにいれてもらおうとするエピソード。正式なスポーツチームらしく、ジャイアンもメンバーに入る側。ドラえもんが飛行する時、秘密道具をつかわない*9
「★オーケーマイク(小二 70年03月号)」誰にでもいうことを聞かせる秘密道具を出したが、スネ夫にうばわれてしまうパターン。連載する学年誌が変わる告知を、のび太ドラえもんが最後の1コマでおこなっている*10。昔ながらの手法として興味深いが、おそらく単行本収録されていれば加筆訂正されただろう。
「★まんが家(小三 70年04月号)」3年生になったことで将来をかんがえるが、どのような仕事でも失敗するとタイムテレビでわかったため、バカでもなれる漫画家になろうとする。原作者らしい自虐的なエピソード。のび太がひとのまねで描いた漫画は、ニャロメそっくりのラクガキが描かれた「バカニャロメ」。
「恐竜ハンター(小三 70年05月号)」てんとう虫コミックスで省略されたタイトルページがモノクロで収録。ドラえもんたちが恐竜を狩ってペットにしようとする。のちの『大長編ドラえもん のび太の恐竜』と矛盾するかのようなエピソード。
「ご先祖さまがんばれ(小三 70年06月号)」スネ夫の先祖が家老だったと自慢され、のび太は対抗して先祖をもりたてようとする。「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」*11という有名な台詞にはじまり、戦争のむなしさを描きながら説教臭さのない、寓話的な名エピソード。
「古道具競争(小三 70年07月号)」スネ夫に対抗して、未来の古道具屋にたのんで、より古くて珍しい道具へ交換していく。構成もよくできているが、さまざまな道具の歴史を絵として楽しめる、知的好奇心をそそるエピソードとしておもしろい。
「ソーナルじょう(小三 70年08月号)」思いこんだとおりに周囲の世界を変えていく薬が登場。外見が変わるのは基本的にキャラクターのさわるものだけで、背景は変わらない。家や街を海に見立てて、空中を泳いでいくシュールな情景が楽しい。
うつつまくら(小三 70年09月号)」見た夢のとおりに世界を変えていく枕が登場。前回の応用エピソードにすぎないかと思いきや、夢の中で夢を見ていく構成の入れ子細工がすばらしい。インナースペースSFらしさの強い、初期の傑作。
「のろいのカメラ(小三 70年10月号)」被写体の人形が出てくるカメラが登場。その人形を傷つけると被写体も傷つく。何も知らずに人形をしずちゃんにわたしたところ、しずちゃんがガン子*12へわたされ、騒動へと発展する。人を呪わば穴二つとばかり、いったんドラえもんがひどい目にあう展開がおもしろい。ドラえもんが秘密道具を放置し、のび太が勝手に使うパターンの初出でもある。
「おばあちゃんのおもいで(小三 70年11月号)」短編映画化もされた有名エピソード。祖母のキャラクターのすごさだけで、10頁以上を充分に楽しませてくれる。原作者の力が入っているためか、これも後年の加筆が目立つ*13
エスパーぼうし(小三 70年12月号)」パーティーで芸をひろうするため、今度は超能力をつかおうとする。うまくつかえないため超能力が裏目出てしまう描写にバラエティがあり、密度が高い。
「手足七本目が三つ(ねこの手もかりたい)(小三 71年01月号)」手足や目鼻を自由につけかえたり交換する肉体改造エピソード。その肉体交換で商売しようとしてスネ夫の家に友人を集めさせる。ジャイアンしずちゃんの他に「サブロー」という少年が出てくるが*14、肉体を交換しにこないし、ストーリーにもからまない。機能しないキャラクターとして消えていったのも当然だろう。
ドラえもんだらけ(小三 71年02月号)」宿題をかたづけようとしたドラえもんが、傷だらけの姿で見つかる。のび太がタイムマシンで真相を知ろうとすると、とんでもない展開がはじまった。タイムスリップSFとしてもSFミステリとしてもスラップスティックとしても完成度の高い、傑作エピソード。
「のろのろ、じたばた(小三 71年03月号)」のび太ノロマをなおそうとして薬を出すが、ドラえもんの試飲にはじまり、誤飲をくりかえして騒動に発展する。
「タイムマシンで犯人を(小四 71年04月号)」犯人探しとタイムマシンを組みあわせたパターン。のび太が冤罪にかけられる発端から、最後に明かされる真犯人まで完成されたパターンそのまま。
「うそつきかがみ(小四 71年05月号)」人間を美しくうつしたあげく、ほめちぎって奇行にはしらせる秘密道具が登場。鏡にうつる虚像が、いつもと絵柄から変えているところがおもしろい。頭髪がカケアミという技法で処理されていたりする。
「あやうし!ライオン仮面(小四 71年06月号)」しめきりに追われる漫画家をドラえもんが助ける。同種エピソードのようにアイデア出しで助けるパターンとは少し違って、連載の先を知ろうとしたことから別パターンへとつながっていく。
「かげがり(小四 71年07月号)」影をきりとって分身として働かせようとするが、影が自我をもちはじめて入れかわろうとする。影が反乱する描写が長くて、しっぺ返しよりも恐怖の印象が強い。アイデンティティクライシスホラーとしてよくできている。
「アリガターヤ(小四 71年08月号)」神様のように崇拝される秘密道具で、のび太が調子にのる。スネ夫にうばわれこそしないが「オーケーマイク」に似ていて、すでにネタを使いまわしている感がある。
「ロボ子が愛してる(小四 71年09月号)」のび太が女の子におだてられてハシゴをはずされる。かわいそうに思ったドラえもんがアンドロイドの少女を与える。ロボ子の愛情表現は、今になって見ると「ヤンデレ」的なかわいさがあって、けっこう悪くないものがある。
ドラえもんの歌(小四 71年10月号)」ジャイアンリサイタルが「どく唱会」という説明で初登場。ただしエピソードの見どころはドラえもんが故障するところ。ジャイアンよりもひどい歌を他人へ聞かせようと暴走する。
「プロポーズ作戦(小四 71年11月号)」のび太のパパとママの出会いが描かれる。たがいが相手からプロポーズしたといい、ケンカになったため、タイムスリップして確認に。眼鏡をはずした美人のママや、パパの妹*15といった家族設定が新しく提示された。
「夜の世界の王さまだ(小四 71年12月号)」ねむらずにすむ薬をつかって、のび太は夜の世界で自由に羽をのばそうとする。現在の東京の住宅街では難しいエピソードだろう。てんとう虫コミックスに収録されたエピソードだが、原稿が見つからなかったらしく、複写ですまされている。
「勉強べやの大なだれ(小四 72年01月号)」ベルトコンベヤ型の多機能なゲレンデシミュレーターで、スキー練習を室内でおこなおうとする。きちんと伏線をはって、室内での遭難をつくりだした物語構成がよくできている。
のび太のおよめさん(小四 72年02月号)」のび太は未来にいって自分が結婚できるかをたしかめようとする。「源静香*16と結婚した未来が初めて描かれたエピソード。ドラえもんがもともとジャイ子と結婚する未来を変えようとしたことは、なぜかこのエピソードでは言及されていない。
「★最終回<2>ドラえもんがいなくなっちゃう!?(小四 72年03月号)」のび太が自分にたよりすぎるようになったため、ドラえもんが未来へ帰ろうとする。第2の最終回だが、同じ号に再開の予告が出されている。日本テレビ版のTVアニメの最終回とストーリーが同じで、その関係でつくられたエピソードらしい。
「★再開の予告(小五 73年03月号)」のび太がなつかしむようにつくえを開けると、ドラえもんが「バア」とあらわれ、6年生という「だいじなとき」のため戻ってきたと説明する。2頁の見開きながら、ちゃんと漫画として成立している。
石ころぼうし(小六 73年04月号)」存在が気にされなくなる秘密道具が登場。さわったりしても気づかれないところが透明化する秘密道具とはちがう。存在を気にされるとはどういうことか、さっそく高学年向けらしい教訓が感じられるエピソードとなっている。
「してない貯金を使う法(小六 73年05月号)」パパの弟が月賦で高額な買い物をしているのを見て、のび太はプラモをすぐさま買う方法を思いつく。月賦に追われる苦しさを、秘密道具をつかって子供が体験する、またしても教訓性の強いエピソード。しかし秘密道具のつかいかたにアイデアがあり、物語構成もSFとしてよくできている。
「N・Sワッペン(小六 73年06月号)」ワッペン型の秘密道具で、磁石の両極のように引きつけたり反発する。シンプルな設定からバラエティある展開を見せていく。のび太ジャイアンよりは磁石にくわしかったり、男女をくっつける展開があったり、やや背伸びしたエピソード。
「ママのダイヤを盗み出せ(小六 73年07月号)」タイムスリップして犯人探しするエピソード。真犯人は自分というパターン通りかと思いきや、最初からサブタイトルで明かしているようにポイントは別にある。子供時代のオテンバなママがかわいらしい。
「珍加羅峠の宝物(小六 73年08月号)」宝さがしエピソード。いろいろありながら成功はする、ちょっと珍しい展開が見られる。
「怪談ランプ(小六 73年09月号)」そのランプをつけて怪談をすると、語ったとおりの情景が展開するというエピソード。偶然を制御する系統の秘密道具として、なかなか完成度が高い。怪異を現実の出来事として謎解きするのも楽しく、たとえば島田荘司ミステリに近い印象がある。
「月給騒動(小六 73年10月号)」なくなった月給をさがしてタイムスリップするエピソード。ほぼパターンどおりだが、伏線がしっかりしているのと、仕事後に飲み歩く父親の一面を楽しめるという見どころはある。
「未来からの買いもの(小六 73年11月号)」謎のカタログをつかって、のび太が秘密道具を入手していく。知らずに代金が補填されているオチの初出だが、このエピソードでは補填できないために逃げ出す展開があり、さらにひねった結末をむかえる。
「一生に一度は百点を…(小六 73年12月号)」ジャイアンのパパが初登場。のび太が倫理観のぎりぎりでふみとどまる印象的なエピソードであり、倫理観をふみはずしたジャイアンが痛い目にあうエピソードでもある。しかし、どちらにしても身内を保護者が信用していないという作者の人間観がすごい。
「いやなお客の帰し方(小六 74年01月号)」年末年始の人づきあいが大変だからと、パパの社長が家にあがりこんでくる。人間を帰らせる音楽を秘密道具で流したところ、社長より先にママが実家に帰ろうとするのがおかしい。
「出さない手紙の返事をもらう方法(小六 74年02月号)」手紙をいれると返信の手紙が出てくる秘密道具が登場。実際に手紙として成立するよう、送り先や切手が必要なところが、いかにも秘密道具らしい杓子定規ぶり。返信される内容も、それそのものはリアル。考えようによっては、読者に手紙の出しかたを教えるエピソードといえるだろうか。
「ユメコーダー(小六 74年03月号)」のび太スネ夫が、どちらがしずちゃんに愛されているのか競争する。のび太が複数のキャラクターが愛されるエピソードは何度かあったが、しずちゃんを複数のキャラクターが愛するエピソードは初めて。のび太スネ夫しずちゃんを公園に呼びつけ、「こっちこっち」とペットを呼ぶように自分のところへこさせようとして、「バカにしないでっ!」と激怒させてしまう*17。さらに、すでに「のび太のおよめさん」でしずちゃんとの結婚を描いているのに、ここでのしずちゃんは、のび太を結婚相手として考えていない。女性を選ぼうとする身勝手な男性と、自分のことを自分で決めようとする女性を描いているわけだ。タイムスリップして打算的に結婚相手を変えようとすることが『ドラえもん』の始まりだったわけだが、それをフォローするエピソードが最後に収録されたことで、きちんと第1巻として物語が完結した感覚がある。


巻末には「特別資料室」として、雑誌『小学三年生』の1970年1月号2月号に掲載された人物説明を収録している。そこで「しずちゃん」の名前を「しず子」、「スネ夫」を「すね夫」と表記したり、ドラえもんを「イヌとネコのできそこないロボット」と説明したり、設定がかたまっていなかったことがわかる。
さらに「ドラえもんのおとしだま」という2頁漫画も収録。4人の漫画家による正月競作企画で描かれたもので、ドラえもんが自身の欲望にしたがって秘密道具をつかう。初めて読んだが、サブタイトルが目次にのっていないことが不思議なほど、ひとつの作品として完成している。
解説は劇作家の鴻上尚史。作品の前後関係や設定のゆるさに着目しつつ、それを良い意味での大らかさと評価する。同時に、ドラミちゃんが登場すると現代の漫画に近くなるとも指摘する。

*1:17頁。

*2:86頁。

*3:75頁。

*4:87頁。

*5:90頁。

*6:132頁。

*7:139頁や150頁など。

*8:私の手持ちは1991年の第105刷。

*9:304頁。寒さにたえるためストーブをポケットに入れ、それにより起きた火事で空高く飛びあがった直前の描写と、つながっている可能性がある。あるいは描き忘れの可能性もある。初期作品は四次元ポケットすら描かれていないコマが複数ある。

*10:314頁。

*11:360頁。

*12:名前もデザインも『パーマン』の主人公妹そっくり。

*13:432頁や442頁。

*14:このエピソードでは466頁で電話する時に名前が出て、顔を出すのは467頁なので、直接に名前を呼ばれたコマは存在しない。「片倉サブロー」というフルネームがマニアに知られており、別エピソードにも登場する。

*15:おそらくのちのエピソードに登場する北海道のおばさん。

*16:漢字表記は初登場。634頁。

*17:762頁。