法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラゴンボールZ 神と神』

2013年に公開されたアニメオリジナルストーリー。『ドラゴンボール』旧シリーズの直接的な後日談として展開された。
ドラゴンボールZ 神と神 2013年3月30日全国超拡大公開!
原作の最後で印象的だったウーブが見当たらないことなどから、TVアニメ版の展開もおりこんでいるのだろうか。アニメ作品は全て追っているわけではない*1ので、はっきりとはわからない。ただ原作は全て読んでおり、その流れで面白く感じたところは後述する。
山室直儀のキャラクターデザインは旧アニメに比べてあっさりしている。直線的で無駄のないシルエットは、近年の原作者の絵柄に似ているし、映画全体をとおして統一されているから、これはこれで良いものだ。志田直俊など東映アニメーション映画で常連のアニメーターが要所をかため、全体として楽しめる。洞窟内のアクションが特に良かった。


物語は、目ざめた破壊神ビルスと、地球を守ろうとする主人公の宇宙規模の戦いを描く。しかし、どこまでも雰囲気は明るい。
シリーズ後期のように無理やりシリアスを壊すようなギャグを入れるのではなく、序盤からビルスの性格がかなり温和で、あまり破壊に積極的でないことを描いている。
かわりにシリーズ初期の弱い敵を再登場させて、ドラゴンボールというアイテムを物語の要点に戻し、アクションよりもコメディで話を進めていくのも懐かしくて良かった。


オチもシリーズの再起動にあたって悪くないものだ。少年漫画における主人公の「強さ」を描いてきたシリーズらしい結末と思えば興味深い。
もともとのシリーズはドラゴンボールというアイテムを集める冒険譚であり、それは初期にレッドリボン軍のような悪を倒しながら達成した。主人公は最初から「強さ」を持っており、それは物語を進めるための道具だった。
やがて天下一武闘会で強さを競うようになり、当初は変装した師匠に負けたりしつつ、地球最強の敵と、その敵の生んだ復讐者に勝って、「強さ」を目指す物語は頭打ちになった。
次に異星から侵略者サイヤ人が来て、主人公は同質の「強さ」を持つ敵と戦うことになり、最終的に次世代に助けられる。同胞と戦うことで、主人公の「強さ」の来歴が描かれた。
そしてナメック星に向かってドラゴンボールの来歴も明かされ、物語の最初から示された世界観では最強の敵フリーザと戦い、ここで「強さ」を競う対決は終わった。ここが物語のピークと思う読者が多いのも当然だろう。
地球に戻ると、主人公は自らの「強さ」を吸収する敵、真似する敵「人造人間」との戦いをしいられる。武闘会をパロディしたような展開や、異星での戦いを反復するような主人公強化も、展開が頭打ちになったことを示す。
最後のエピソードでは、もはや武闘会は形骸化しており、もりあげるために子供たちは戦いをひきのばす。魔人ブウという敵に対抗するためには仲間と融合するしかなく、しかも最終的には「強さ」以外の要素で敵を打ち倒した。
そして今回の映画は、物語を終わらせるために主人公は「強さ」で敵を超える必要がなかった。だからこそ、主人公は自分より強い存在が外の世界にいると知り、再び「強さ」を競う物語に乗り出すことができる。

*1:特にオリジナルTVアニメ『ドラゴンボールGT』は極一部しか見たことがない。