法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ステッキで川をまっぷたつ/しかえし伝票

今回は前後ともに原作あり。『アニメで分かる心療内科』が放映中の小倉宏文監督が、コンテ演出で初参加。シンエイ動画では『エリアの騎士』を監督していた。後半は善聡一郎監督コンテ。


「ステッキで川をまっぷたつ」は、旧約聖書をもとにした秘密道具「モーゼステッキ」で水を分断して底をさらし、探し物をしていく。
いかにも原作者らしい、映画『十戒』をモチーフにしたような情景の物語。そのスケールをそのままアニメ化。原作よりも滝っぽさが映画に近かったくらい。
後半はアニメオリジナル。湖の底に宝があるというテレビ番組の記憶をもとに、ジャイアンスネ夫しずちゃんが乱入する。ダジャレはつまらないがつじつまはあっているし、より強欲ゆえの失敗と強調されていて、全体としては悪くない改変。ただ、しずちゃんは後半の物語では機能していないし、今回は冒頭にも登場していたのだから、わざわざ出さなくても良かったんじゃないかな。


「しかえし伝票」は、いつものように秘密道具が誤配送されてくる。それは、受けた暴力を伝票に書いて誰かに拾わせると、その拾った人物が復讐を代行してくれるというものだった。
ほとんど原作通りで、構成を崩したりもしていない。いくつか細かい描写を足していたが、それも原作にあったものの延長。
今回のオチは、恐ろしいことが起こることをにおわせつつ描かない。どうしても映像化するとオチを明示してしまいがちだが、ここで視聴者の想像力にたくした判断は良かった。
それにしても、しずちゃんを巻きこまないという微かな良心が、決定的な破滅に導くのは皮肉だ。しかし、それゆえ後味が悪くなりすぎない良さがある。破滅するのは確実だろうが、思えば最初からのび太自身がやるべきことをやるだけだ。