法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』動物変身恩返しグスリ/雪だるまが町にやってきた

冒頭に「ドラえもん当たり前体操」を持ってきたり、番組構成が少し変更されていた。
前半は原作に独自の魅力を加えて、アニメオリジナルの後半ではスタッフでサプライズ。作画監督はどちらも田中薫。今週もなかなか良かった。


「動物変身恩返しグスリ」は、鶴の恩返しをモチーフにした原作回。助けた動物にふりかけると少女に化けて、恩を返しに来るという薬が登場する。
ほとんど原作通りに進行するのだが、途中でドラえもんが意図せずネズミを助け、偶然に薬もふりかけてしまう。無理やり後づけしているのではなく、ネズミが動けなくなっている前ふり描写をきちんと入れ、原作にもある騒動から自然に展開しているので違和感がない。最後に薬の容器にさわった人間が恩を返してもらえるという、アニメ独自の法則もきっちり守っている。
この恩返しに来たネズミがとにかくかわいい。ネズミが化けているためドラえもんは拒絶するのに、けなげに恩を返そうとがんばりつづける。異界の相手と関係を結ぶ物語として見ると、また違った昔話らしさらしさもある。ネズミとして命がけで戦う相手が先の泥棒猫というところが、また原作部分となじませていて良い。
最後の最後に、流れるように原作展開に戻って終わり。のび太だけが恩をきちんと返してもらえないという天丼ギャグだが、先のアニメオリジナル展開で強調されていて、より笑えた。
コンテ演出は楠葉宏三総監督。泥棒猫を助けるシークエンスで位置関係をていねいに見せていたり、泥棒猫が逃げ出す描写で野比家の構造をしっかり把握したアクションを展開したり、全体に細かく神経がいきとどいていた。キャラクター作画がかわいらしかったりと、作画監督の力もあるだろう。


「雪だるまが町にやってきた」は叙情性の高いアニメオリジナルストーリー*1。物語の密度そのものはシンプルなのだが、かわりに引っかかるところもなく、映像の良さを素直に味わうことができた。
雪が降りつづける情景の静けさから、巨大な雪だるまが町へと向かうビジュアルの面白さ、秘密道具を発動することで雪が溶けていくカットのSFセンス……やけに絵作りがいいと思っていたら、まさかの寺本幸代コンテ演出。
てっきりオリジナル映画を監督したのは作品を離れる予兆かと思っていたのだが、またローテに復帰してくれるなら嬉しい。

*1:「ロボット雪だるま」というエピソードもあるが、最後に溶ける意味あいなども全く違うので、意識していたとしても元ネタていどの位置づけだろう。