法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『凪のあすから』第一話 海と大地のまんなかに

PAワークス制作のオリジナルTVアニメ。ここ最近に目につくようになった水没世界作品のひとつ。
特殊な皮膜の能力で水中生活している人々と、水をすてて陸上生活している人々のいる世界。水中の学校が廃校になったことで、陸地の学校へ編入された子供たちが、異なる共同体の衝突に直面していく。


まるで児童文学のような作品。楽しげで清らかな情景にのせて、大人の利己主義や子供の差別主義をはっきり見せる。
面白いことに、資源を奪われていく海中の人々は、海に流された生贄の娘と海神の子孫だという神話をもっている。その神話では、陸地に住んでいる人々について、海を捨てたことで海神の怒りをかったとも伝えられている。
しかし神秘的な雰囲気はない。資源をとりあって生活をしているように描かれているため、海神らしき存在が画面にあらわれても、語られる神話に事実の核があったとしても、その観点まで正確と思うことはできない*1
さまよえる民族が一神教にすがったような、地に足をつけて生きざるをえない痛みと、危うさが感じられた。


もちろん、文明の衝突や収奪ばかり描かれているわけではない。物語の主軸は少年少女の出会いにあるようだ。
だが、だからこそ二人をわかつ社会のありようを、どのように物語で見せるかということが問われる。少なくとも初回を見た限り、主人公がよってたつ世界の基盤を積みかさね、固く構築してくれそうだ。

*1:公式サイトのプロデューサー発言によると、「陸で暮らす人たちも元々は海の中に住んでいたので若干テクノロジーの進みが遅れているという設定なんです」という歴史は確定しているようだが。http://nagiasu.jp/interview/01.html