法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『蒼き鋼のアルペジオ ―ARS NOVA―』01 航路を持つ者

GONZOの3DCG制作班から別れたサンジゲンが制作。ここ最近に目につくようになった水没世界作品のひとつ。
第二次世界大戦の軍艦を模した外見と超技術を持つ敵「霧の艦隊」に制海権を奪われ、国家間の交流が分断された人類社会。霧の艦隊から人類社会へ来た潜水艦をあやつる主人公は、どちらの勢力にも完全にくみすることはできない立場ながら、戦いをつづけていた。
思い返せば、GONZOがアニメ制作会社として名前を売った代表作で、手描き作画と3DCGを合成した映像が印象的だったOVA『青の6号』も、水没世界で追いつめられた人類の戦争を描いていた。
岸誠二監督と上江洲誠シリーズ構成は、GONZOでは『瀬戸の花嫁』のTVアニメ化を手がけていた。『瀬戸の花嫁』は、鼻につくくらい原作のビジュアル引用が多い岸監督と、原作を素材としかみなさないGONZOの作風が、良いあんばいに入り混じっていた。この作品では物語の導入部分が異なるが*1、今後どうなるだろうか。


日本が制作する毎話30分のTVアニメで、キャラクターのほとんどをセルシェーディング*2された3DCGで描画するのは、記憶では初めての試みだ。
2001年の『RUN=DIM』は韓国が3DCG制作を担当していたし、セルシェーディングされていなかった。途中から3DCGキャラクターにきりかえた『きらりん☆レボリューション』や『極上!!めちゃモテ委員長』という少女向けアニメもあったが、やはり日韓共同制作だったし、強くデフォルメされた原作の絵柄と合っているとはいいがたかった。
メインキャラクターや大軍を3DCGで描くという同種の挑戦をおこなった『キングダム』も放映中だが、当初から3DCGの質が弱く、手描きされたサブキャラクターとの違和感もあって、現在ほとんど手描き作画へと切りかえられている。


サンジゲンはさまざまなアニメ会社に協力して、手描きアニメの魅力をとりいれた3DCGを制作してきた。経験の蓄積があるためか、地味なカラーリングのメカしか登場していないのに、複数ある艦戦シーンは見やすくも見ごたえ充分。
そして全キャラクターを3DCGでモデリングしながら、セルアニメーションと比べて違和感がない。原作マンガの最新話は未読だが、インターネットで確認した限りでは、その絵柄をほとんど3DCGでそれらしく再現できていることに感動した。
まだモーションは不自然さがところどころ残っているものの、目をつぶれるくらいには良好だ。表情は人形のようにほとんど変えず、しかし髪はよくなびかせることで、日本のアニメらしい印象になるところが面白い。それにOPなどの動きは、手描き作画のようにデフォルメした動きを慎重に手づけしているようだ。
映像の安定とカメラワークの自由度というメリットもあるし、このクオリティを保ちつつ向上していくことを期待したい。

*1:インターネットで51頁が試し読みできた。http://sokuyomi.jp/product/aokihagane_001/CO/1/

*2:セル画のように諧調を落とす表現方法。トゥーンシェーディングという呼称が一般的か。