法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『奇跡体験!アンビリバボー』

戦後に起きた冤罪事件として知られている*1二俣事件について、自らの首をかけて告発した刑事の半生が再現ドラマで描かれた。
http://www.fujitv.co.jp/unb/contents/120119_1.html
底本は刑事が自費出版した『現場刑事の告発』とのこと。告発が失敗したために刑事が受けた過酷なしうちは、再現ドラマと思って見てさえ痛々しかった。二俣事件の判決が出た後に偽証罪に問われて逮捕され、あげくのはてに精神病と診断されたため、無罪となって釈放こそされたが免許はとりあげられ、自宅は放火により全焼して、家族もふくめて地域共同体から阻害された。ほとんどカフカ『審判』のような不条理劇だ。
ちなみに書籍の文章には、刑事が真犯人と確信した者の実名が記されていたらしい。時効をむかえた事件について書いた自費出版とはいえ、これはこれでいささか危ういと思った。


個人的には、冤罪被害者となった未成年の男が、探偵小説マニアだからアリバイトリックを駆使したのだという論理でアリバイを否定された経緯が最も印象に残った。罪のない個人の趣味が社会から異端視され、事件が起きた時に犯人の傍証として持ち出されることは、現代にもまま見られることだ。

*1:番組紹介にある「戦後最大のミステリーと呼ばれる二俣事件」という表現は初耳。