法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ボクのび子ちゃん/メカ・メーカー

今回はアニメオリジナル前半と原作に忠実な後半。
ちなみにEDで来年の映画予告映像も流れたが、驚いたことにテロップされる豪華声優が本当に豪華な「声優」ばかり。山寺宏一水樹奈々はまだしも、野沢雅子田中敦子がこういう予告でテロップされる日が来るとは思わなかった。今年の映画は声優の演技面で見れば磐石だろう。


Aパートは、いわゆる「男の娘」というより、いわゆる「TSF」。単に格好だけ女装するのではなく、服装や周囲の認識もふくめて女性化している。
水野宗徳脚本に、大野敏哉が脚本協力。黒板消し落としと眼鏡を取ったら美少女という古典的なネタを組み合わせ、ジャイアンがのび子に恋するきっかけとした部分は感心したが、難点も多く感じた。
正直いって、ジェンダーバイアス強調で終始する描写が見ていてきつい。性差の固定を肯定する内容ではないが、相対化や批判する描写が現代のアニメとしては少なすぎる。原作にもジェンダーを越境することで性差を固定する感覚を笑い飛ばす回がいくつかあるが*1、それらと比べても後退している。
ドラマを話題にする女子会についていけなかったのび太が、おしゃべりだけで場をもたせた女子を不思議がるまではいいが、単に話題へついていけなかった主人公の問題とは明示されていない。男子は女子を助けるものという観念を固定する描写が延々と続き、最終的なしっぺ返しはのび太個人にだけ向かう結末も難。


Bパートは、好きな設計図を入れるとその通りのメカを作ってくれる秘密道具が登場。それも何らかの役に立つメカではなく、空中を飛行し攻撃もできるラジコンを作ってジャイアンスネ夫と競う展開。純粋に遊戯の楽しさを秘密道具で強調した物語であり、アニメ化されたものを見ても子供心をくすぐられる。
大杉宜弘コンテのダイナミックさ、三輪修作画監督による整ってよく動くキャラクター、3DCGで描画された飛行戦艦の緻密なディテール、どれも原作の要点をとりこぼさず見事に映像化していた。

*1:たとえば「ジャイアンズをぶっとばせ」。以前のアニメ化では、原作とはまた違った味わいで、悪くなかった。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080822/1219465263