法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』魔法使いのび太/野比家、夢の温泉旅行

月曜日から公開されていた来年の映画の予告映像と、発表会見の模様を映像で紹介。


「魔法使いのび太」は、のび太が魔女っ子アニメを楽しんでいるからと、ジャイアンスネ夫がいいがかりをつけ、暴力をふるう。そこでドラえもんは好きな呪文が作れる秘密道具を出すが……
2007年に映像化された短編を、ハロウィンにあわせたかたちでリメイク。もりたけしコンテに原画が多めで、そーとめこういちろうもキャラ設定を分担。仮装した幼い子供たちが街にあふれる光景から、ジャイアンがローラースケートを楽しむアニメーションまで、魅力的に映像化していた。
まず現代的なアレンジとして、原作では女の子向けのアニメだろというドラえもんが、今回のアニメでは結局いわない。もともと原作でも女子はのび太たちをかばって、物語を楽しむ時のジェンダーバイアスを批判していた。今回さらに一歩進んだかたちだ。魔法使いとしてふるまうのび太に、3人の幼い少女が向けるまなざしが輝いていて、秘密を共有する姿が愛らしい。
また、のび太が原作よりも多くの呪文を作って、それが幼い子供の言葉で発動したり解除されたりする。おかげで原作ではふっとばされるだけのスネ夫が、延々とひどいめにあうことに。
さらに、原作では普通にローラースケートしているだけのジャイアンが、専用コースのような場所で滑って、呪文の効果で結果的に素晴らしい滑りをするアレンジも。ここは原作に源流があるとはいえ、ちょっと世界観が変わった感じで好きではない。
最後に長い呪文を使おうとして発動できずに終わるのは原作通りだが、先述のスネ夫の関係で短い呪文を多く作っていた今回のアニメではもう少し工夫がほしかったかも。ジャイアンがスケートに成功した後、のび太が短い呪文を破りすてる場面がほしかった。


野比家、夢の温泉旅行」は、旅行にいかないことを母になげかれている父のため、さっきまで遊んでいた立体映像で温泉の気分を味わう。実態としてはせまい家のままだが、そこは工夫して……
2006年に原作通りの「温泉旅行」というシンプルな題名*1でアニメ化された短編。コンテ演出は堂山卓見で、それらしい温泉の広々とした風景と、せまい空間で手探りをつづける一家を、矛盾なく映像化できていた。
今回のアニメでは、立体映像を切りかえてさまざまな世界の温泉を楽しんだり、卓球を楽しんだり、2階にあがって眺望を楽しんだり、制限のなかでも楽しむ場面を追加。さらに2階からジャイアンスネ夫をたのみを断って、呼びこんで撃退する一幕も。意図して驚かすのではなく、立体映像に幻惑されて壁にぶつかったりつまずいたりして散々な目にあうという描写にしてほしかったが、冒頭のジャングルを再利用するかたちなので悪くはない。
オチは原作通りだが、2006年版を踏襲して、原作では洋装だった女将が着物姿に。ついでに物価の違いを反映して、原作5000円で2006年版20000円だった料金が、30000円に上昇していた。原作ではシラフな父を酒で酔わせて、のび太や母が察する表情を足すことで、つい料金をはらってしまう説得力をあげたのも良かった。

*1:ただし、放映時は煽り文句が足されていて、この時は「ドラえもんもお風呂に!?」というテロップが出ていた。