バンダイチャンネルで視聴。絵コンテ担当が久しぶりにTVアニメで全力を出した米たにヨシトモだったので驚いた。今期は『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』で監督およびシリーズ構成を担当しているはずなのに……かつて最もいそがしい時期は短編アニメ映画とOVAとTVアニメを同時進行で監督していた*1とはいえ。そもそも初回を任されたこと自体も驚き。
映像的にはOVA『星の海のアムリ』でフル3DCG作品を手がけた経験があり*2、自由度の高いカメラワークを演出で使いこなしている。キャラクターの位置関係や動きは見づらくなく、かといって普通のアニメと同じようなカメラワークで3DCGの意味を殺すこともなく、舞台となる都市を立体的に縦横無尽に描き出す。3DCG作品はカメラワークの自由度がアニメはもちろん実写に比べても高いので、下手な演出家だともてあましやすい。初回についていえば、作中TV番組でヒーローの活躍を生放送で追いかけるという内容が、良い制約として働いた面もあっただろう。ヒーローの活躍をロングカットの望遠レンズで見せ、生身のキャラクターが見せる間抜けさは普通レンズの手書き作画で、演出として明確に区別できている。
細かいところでは、気球にタイガーがめりこんでしまうコメディ演出が、いかにも米たにコンテらしい。所属していたヒーロー事業部が廃止されて上司も失職したことをタイガーが知らされる場面で、床に落ちているネジの1カット挿入が米たにコンテに珍しい隠喩表現で目を引いた。
物語についていうと、作中TV番組やヒーロー表彰式で、8人もいるヒーローと背景設定を手早く自然に説明したのも良かった。バディ物としての人間関係も、今後の波乱を予感させる描写も必要充分に描かれている。
ただし、作品全体は映像の良い『アムドライバー』という感じが良くも悪くも。初見ではよくある設定をそつなく並べただけで、突出して作品の個性を打ち出す部分がまだ見受けられない。
あと、スポンサーを得て戦うリアルヒーローショーという設定で、現実の企業がスポンサーとして協力しているところが面白いわけだが、この種のアニメ作品だとどこかで必ずスポンサー批判も描写されるだろうな、という気もする。現実の企業に対して成り立つような批判意見でなければ、まあ許されるだろうとは思うが。
*1:それぞれ『ザ☆ドラえもんズ』シリーズ、『勇者王ガオガイガーFINAL』、『ベターマン』のこと。ただし『勇者王ガオガイガーFINAL』は厳密には総監督であり、制作も一時期休止していた。