法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『エスパー魔美』第65話 ドキドキ土器

GYAOで視聴。原作でも印象的なエピソードを元に、原恵一監督が直々にコンテを切った。
カメラを引いて夏の入道雲雄大に見せるレイアウトが印象的。工事現場の重機を見せるカットとか、いちいち格好いい。アニメオリジナル描写として、風鈴売りで聴覚的に季節感を出した描写も、いかにも原監督らしい。
以下、結末の根幹にふれる。


物語は基本的に原作通り。土器に残されていた古代の種籾が発芽したという経験から、現在では通説となっている縄文農耕説を立証しようと40年間も発掘を続けるアマチュア考古学者が登場し、魔美や高畑が助力する。
発掘の方法論は手順をふまえつつ、工事が行われる前にこっそり掘り出そうとするサスペンスが物語を盛り上げる。工事によって貴重な遺跡が壊される問題は、現代にも通じる普遍的な題材だ。


しかし、この物語が特に目を引いたのは、結末の素晴らしさだ。
魔美の超能力によって、内部に種子が詰まった土器が発掘される。その報告を聞いて喜んだ考古学者は種子を確かめ、落胆し、発掘場所を観察して結論を出す。
種子は現代のスベリヒユで、縄文人が農耕で得ていたものではない。伏せられた状態で埋まっていた土器には空間があり、それを見つけた蟻が貯蔵庫に使っていただけだった。
自説を補強する材料が与えられて喜ぶが、安易に飛びつくことなく冷静に観察し、その場で残念な結論を受け入れる。しかし考古学は骨折り損の連続ということを知っているので、あきらめることなく未来への希望を残す。アマチュアではあるが、あるべき学者の姿勢が物語の中で自然に描かれていた。