法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『BLACK★ROCK SHOOTER ANIMATION』

初音ミクから派生して*1盛り上がっているらしい同人キャラクター「ブラック★ロックシューター」のアニメ化。山本寛が監修、谷川流が脚本、アニメーターの吉岡忍が監督および脚本を手がけた。
作画はいわゆる「WEB系」と呼ばれる、ざっくりした手描きの味を活かした線と、デジタル表現で多様化し原画段階で制御された色彩表現が特色。日常も戦闘もよく動くし、滑らかさだけではないメリハリある動きも楽しめる。


ただ、ほとんどの人が指摘しているが、物語の流れがおかしい。爽快感が出そうな展開をことごとく自ら潰している。
いや、時系列を前後させていること自体はいい。さほど理解しにくい流れではないし、見ながら予想できる範囲内だ。説明もない無言の戦闘であるため異世界に感情移入はしにくいが、逆に日常生活との対比として意味がある。後味悪い結末の描写も、都合良くキャラクターを切り捨てて終わらないと受け取れば、誠実と考えられなくもない。
しかし、主人公の日常と異世界の戦闘が交差し、主人公が失った友人を取り戻した後に、異世界描写の意味が長々と台詞で説明される順序はおかしいだろう。まず主人公が異世界描写の意味を説明された後、友人を取り戻すという順序にするだけでいい。そうすれば抑圧された主人公が決意とともにブラック★ロックシューターとなる奇跡をえて、友人を救うという爽快感が出せるはず。融合する描写の後、冒頭の戦闘からカットバックで入れたり、逆に冒頭以降の全描写は鎖でしばられ気絶していたブラック★ロックシューターの回想だったと示せば、さらに展開が理解しやすくなっただろう。
どうして現在のような時系列構成になったか考えたが、一場面だけ前後すれば充分なところをあえて現在の構成になっているところから推測できる。おそらくはプロモーションビデオであることを優先するため、ED直前に名前をつぶやく描写をしたのだろう。しかしED後に日常へ回帰する描写を入れているのだから、現状でもキャラクター単体のプロモーションとしては余剰が多すぎる。


あと、個人的には異世界の意味合いもはっきりさせてほしかったかな。少女達の内面をイメージ的に描いた世界という設定が好みだが*2、単なる並行世界というSF設定でもかまわない。
現状では異世界の意味がはっきりしないまま日常へ回帰することなくEDへ突入するため、戦闘終了後の不安感が無駄に大きい。おかげでED後の不安感ある描写も陰鬱なだけで、良くも悪くも衝撃が薄かった。

*1:先行したオリジナルのイラスト作品と融合したという順序が正確らしいが、よくわかっていない。

*2:映画『乙女の祈り』というサイコホラー作品が似ている。実話だが。