法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『第九の日』瀬名秀明著

機械的に拡張された人体や、人工知能をめぐる連作SFミステリ。
人によって作られ、あるいは改変された身体によって、人の心理もまた変化を余儀なくされる。
SFとして読むと、人間のささいな変化によって現出する異世界像が衝撃的で、最後のカタストロフまでふくめて楽しい。しかしミステリとしてはトリックが機械的で合理性が感じられなかったり、真犯人像に意外性が薄かったり、推理の過程がはしょられていて楽しめなかったり、欠点が目立った。まだしも前半の2作品はミステリの定石に合わせていたが、うち1作品はアンソロジー『21世紀本格』への書き下ろし時に読んでいる。ちょっと期待しすぎたか。