法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

東映アニメーションのプロデューサー

ルーマニア*1でアニメというと、ドラキュラというキャラクターが個別に使われることばかり。
国名や政治状況が明確に描かれた例は『ブラックラグーン』で「チャウシェスクの子供達」が登場したくらいしか思い出せない*2。『MASTER キートン』でも原作の終盤にチャウシェスクからみの展開があったが、これはアニメ化されていない。
他には、主人公のナージャが欧州全体をめぐる『明日のナージャ』で、少し登場したくらいだろうか*3


http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20071006-OHT1T00086.htm

ルーマニア革命戦士日本でアニメプロデューサー転身
 あのチャウシェスク政権を倒した男が日本でアニメを―。ルーマニア生まれのギャルマト・ボグダンさん(38)がプロデュースしたアニメ「はたらキッズ マイハム組」(テレ朝系、日曜・前6時30分)が7日から始まる。壮絶な半生を経て、母国から遠く離れた日本で実現したアニメ作りの夢。ボグダンさんは「日本人のモノづくりの素晴らしさを伝えたい」と語る。

 主人公は不思議な能力を持つハムスター。大工や消防士、パティシエに医師…。“仕事人”ハムスターが、人間社会のさまざまな難題に立ち向かっていく。「視聴者の方が、どんなふうに見てくれるのか。ドキドキしています」と目を細めるボグダンさんだが、アニメのかわいらしさとは対照的に、その半生は壮絶なものだった。

 1989年12月。ボグダンさんは“ルーマニアの東大”ブカレスト大の学生だった。「24時間寝ないで議論した。この国はどうあるべきかということを」ベルリンの壁崩壊以降、東欧の社会主義国では、民主化への動きがドミノ倒し的に活発化。ボグダンさんも有志を集い、チャウシェスク独裁政権の打倒という危険な計画のリーダーとなった。

 悪名高い秘密警察「セクリタテア」の監視は強まり、厳しさを増していく日々の生活。当局の嫌がらせなのか、愛犬のバルザック(コッカスパニエル)は家の庭先から消えた。それでも志に同調した仲間は数万人規模に膨張。デモ、衝突は何度も繰り返された。「先頭にいた軍人の銃口は上に向けられ、威嚇かなと思った。でも、そうじゃない。その間から顔を出した兵士が我々を撃ってきた」3歳下の弟・オビデューさんは右ひざを弾丸でえぐられた。

 チャウシェスク政権は崩壊。しかし、受難の日は終わらない。危険人物として混乱の中で当局からマークされ続けた。そして、いよいよ司直の手が。幸運だったのは検察官の娘が大学の同級生だったこと。事前に「逃げた方がいい」とリークしてもらい、電車に飛び乗り父の祖国であるハンガリーへ向かった。

 政治とは距離を取り、ブダペスト大で猛勉強を開始。三島由紀夫黒澤明の作品を通じて日本文化の魅力にはまっていった。そしてアニメ。ボグダンさんが子供のころ、ルーマニアでは「ヤッターマン」「アルプスの少女ハイジ」といった日本のアニメが字幕付きで放送されていたという。

 ボグダンさんは文部省(当時)の留学生制度を利用して日本行きを決意した。千葉大で歴史や言語学を学び、98年にはスポーツジャーナリストの小松成美さんと結婚。日本は「第二の故郷」となった。

 来日後は、芸能プロダクションなどに勤務。昨年4月、長年の夢がかなうときがきた。あるパーティー東映アニメーションの清水慎治さん(55)=経営企画室=と出会った。その後、食事をすることになり、ボグダンさんはその場で履歴書を手渡した。「『今までの人生を捨て、東洋の地でアニメを作り、世界へ発信したい』と言われた。すぐに会社に掛け合って面接しました」(清水さん)。外国人を即座にプロデューサーとして起用することは「非常に異例」だという。

 革命や政治的混乱に翻弄(ほんろう)されながら、日本で子供のころからの夢を実現させたボグダンさん。「日本人のモノづくりへの愛情や素晴らしさを表現した。物語性に徹底的にこだわっていきたいと思っています」

 ◆ギャルマト・ボグダン 1968年12月30日、ルーマニアブカレスト生まれ。38歳。父はハンガリー人、母はルーマニア人の二重国籍ルーマニアブカレスト大で比較文化を学び、89年の革命に参加し、チャウシェスク政権を打倒。その後、国を追われ、ハンガリーへと移住。ブダペスト大で日本文化を学ぶ。92年に来日。千葉大などで学び、98年に小松さんと結婚。通訳や翻訳家などを経て06年8月、東映アニメーションに入社。ハンガリー語ルーマニア語以外に、英語、日本語、イタリア語、フランス語、スペイン語と7か国語を話す。

 ◆ルーマニア革命 1989年12月16日、同国西部でハンガリー系住民の強制移住に反対する市民らが警官隊と衝突したのをきっかけに、反政府デモが全土に拡大。その後、軍も市民を支持。チャウシェスク大統領は同22日、首都をヘリコプターで脱出したが、捕らえられ銃殺刑に。共産党による独裁政治は終息した。

一見して小さな話と思うかもしれないが、些細に見える文化を許容できるかどうかで国家の強度が試されるという話でもある。かもしれない。
アニメ内容と革命半生を単純に対置すると笑えるが、子供のため未来のために生きているのだと考えると感動もする。ギャルマト・ボグダン氏の内面は一貫しているのではないか。


あまり説教臭い話は子供にも受け入れられにくいが、次に繋がるように頑張ってほしい。

*1:正確には日本の歴史にほとんど登場しない東欧全般

*2:B級サイコスプラッターアクションを突きつめて、風格すら感じさせる内容にしあげていたことには感心した。

*3:調べ直してみるとサブレギュラーの団長がルーマニア人だった。