法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

クロスアンジュは「汚いシムーン」じゃなくて「ダサいウテナ」だと思う

芯が強いのは主人公だけなところや、意外とヘテロなドラマであるところや、ラスボスの設定といったところで。


シムーン』も『少女革命ウテナ』も「美しければそれでいい」というアニメだったが、たぶん前者は気高さ自体を目指し、後者は気高くない世界を茶化そうとしていた。
『少女革命ウテナ』の演出家座談会で語られた、監督の方針が興味深い - 法華狼の日記

風山:僕がよく言われたのは「道徳的なことをなるべくしたくない」という事だったんです。世間一般でいうところの良識というのを排除したいと。だから、ある程度、自分の理性を殺してやらなくてはいけなかった。

しかし出来上がった『少女革命ウテナ』は、コアなフェミニストからも評価されるような、政治的な正しさを読み込める作品になった。逆に考えると「道徳的」「世間一般」「良識」というものが、いかに政治的に正しくないものであるか、ということに通じる。

クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』も、クリエイティブプロデューサーが逆張りの意図を何度もツイートしている。ならば『少女革命ウテナ』へ似るのも当然かもしれない。
絵作りがダサくても、引用元がアニメばかりでも、『少女革命ウテナ』のような作品は成立しうる。耽美な気高さで「世界の果て」に立ち向かうのではなく、下品な乱暴さで「エンブリヲ」に立ち向かう。


ただし、逆張りしようとするだけだと、何が順張りなのかを見失って迷走しやすい。最終回が近づいて安心感は増したが、まだまだ『クロスアンジュ』には危なっかしさを感じている。
クリエイティブプロデューサーが監督していた『機動戦士ガンダムSEED』と似たモチーフを使いつつ、感じていた欠点をほぼ払拭しただけでも高評価はしているのだが……